秘密の共有1 ページ29
日曜日は一日中、零と遊んですごしてとても楽しかった。
昨夜彼の顔によぎった、誰かの死を思い起こすような陰鬱な影も見当たらなくなっていたので、多分零もリフレッシュできたと思う。
もう、過保護なことについて零に問いただすのはやめよう――と思いながら、夕食を取りつつ、私たち翌週の予定を話し合った。
零はポアロのシフトを増やせる程度には、公安(とは決して本人は言わないけれど)の仕事に余裕があるみたいでホッとする。
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月曜日は東都大学に顔を出した。
大学内は、鈴木財閥の美術館宛に出された怪盗キッドの予告状の件でもちきりだった。
ミーハーな話題になど普段触れない沖矢さんがわざわざ私に「キッドの次の予告、ご存知ですか？」と聞いてくるから
「実は私、その展覧会気になっていたんですよね。だから、既に有給取っていて、当日のチケットも抑えてるんですよー！」というほかない。嘘をついてもいいけど、キッドが来る以上テレビカメラが入るだろうし、映らない保証もないよね。
後で嘘がバレたりしたら、多分とてつもなく面倒な展開になるのは予想できた。
だって、キッド絡みだし。
そうしたら、沖矢さんはその日のうちに、園子ちゃん経由でいまやプラチナ扱いのチケットを手に入れたというのだから本当にずるい。
何その軽いフットワーク。
イケメン好きな園子ちゃんを利用しないで。
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ちなみにチケットの購入について聞かされたのは、翌日。
今は米花町某所にあるFBIの事務所に寄った際の昼休み。
わざわざ、ジェイムズが外にランチに誘ってくれてそこに来たのが沖矢さん。
まあ、レストランにランチに行くというのも事務所に向けた表向きの口実で、実際は某ホテルの会議室を抑えてルームサービスを頼んでいるし、私は零の作ってくれたお弁当を頬張っています。
偽装死って大変だよね。
当然、同席した証拠も残さない。
あれこれと込み入った打ち合わせが全て終わり(聞きたくない私はあえて離れた席でイヤフォンで音楽聞きながらスマホを見ていた)、ジェイムズが気をきかせて席を外してくれた時に沖矢さんが話してくれた。
「だから、送迎はお任せくださいね」
「もしや、私の送迎のために、わざわざ園子ちゃんに連絡を？」
「心配じゃないですか。あなたがさらわれてしまわないかどうか」
心配そうな表情が演技に見えないから怖い。
「心配しなくても、宝石にしか手を出さないと思いますよ」
私は頭を抱えるほかなかった。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月8日 10時
