call2―赤井side― ページ19
なるほど。難問だと思っていた問題であっても、その答えは往々にしてシンプルだ。
今回もまたそうなのかもしれんな。
Aを轢き逃げした犯人は、その証拠をうまく隠蔽しようと思ったわけではないということか。
Aを移動させた誰かは「轢き逃げの証拠を隠蔽し、飛び降りを図ったように見せかけたかった」わけではない――という可能性もあるということか。
そんな可能性、微塵も考えなかった。
それは、「そんなこと考えたくもなかった」から無意識のうちに選択肢から排除していたのだろう。『大切な人』のこととなると、極端に推理力が鈍る。
――まだまだ、改善の余地ありだな。
紫煙を深く吸い込み、心でため息をつき思考をまとめ上げていく。
「昴さん、大丈夫? つまらない答えだった?」
静寂に耐えかねて、口を開いたのはAの方。
「いいえ、とても素敵な答えでした。大変参考になりました。
今すぐ会いに行って言葉では伝えきれない想いを全身で伝えてあげたいのですが――」
「あ……あのね、昴さん。私は全然大丈夫だから。仕事済ませてきて?」
どうやら、言葉で愛を語り合うのは苦手らしい。Aは照れた口調で半ば逃げるように言う。
大丈夫――ねえ。その言葉を発する時、まず大丈夫ではないのだが今回は乗らせてもらうよ、悪いね。
「ありがとう。では後ほど」
「うん!早く見つかるといいね」
こちらの口調に引きずられることがなくなったのは、おそらくすっかり記憶を取り戻したからなのだろう。
ふわりと、電話の向こうでいつものようにAがとびきり甘く微笑んだ気がした。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月19日 15時