溺愛中！6【降谷零/安室透】【沖矢昴/赤井秀一】

鳩と雨5―赤井Side― ページ10

Aは「沖矢昴」との関係を複雑に考えすぎだ。

――でもまあ、それだけ真剣に俺のことを考えて、頑張って線を引いてくれているのにこちらから崩すわけにはいかない。

そんな彼女がそれでも他に頼るあてもなく途方に暮れて「銃で撃たれた青年を拾ったから助けてくれ」と突拍子もないことを言いだすのだから、放っておくわけにはいかなかった。

あれほど自分はがまんして距離を保っているのに、他人を助けるためなら危険を顧みないあたりが――。実に彼女らしい。

そして、その自分のことをどこまでも後回しにする姿が、心底心配になる。


彼女を助けたい気持ちは変わらないので、早々に家に向かった。

幸いにも、隣人である降谷君が絶対に帰宅していないとわかっているので、少しは近づきやすい。

驚いたのは、彼女の家に居たのが「工藤新一」だったからだ。

工藤新一の顔は、過去のニュースを検索すればすぐに分かる。

彼がメディアに出なくなった時期に江戸川コナンが毛利家で暮らし始めたと聞く。

――しかも、ボウヤは俺に工藤邸に住むよう勧めてくれたし、沖矢昴の変装技術を伝授してくれたのは工藤新一の母である工藤有希子さんだ。



だから俺は、灰原哀の正体が宮野志保であるのと同様に、江戸川コナンの正体が工藤新一だとばかり――信じ込んでいた。



それがどうして、Aの部屋で銃に撃たれて倒れているのかさっぱりわけがわからない。

江戸川コナンは今も帝丹小学校で授業を受けているはず。

工藤新一の傷自体はたいして深くはなく、出血も止まっていたので改めて処置しておいた。

服を脱がせてみたがそう傷跡があるわけではなかったので、出血による気絶というよりは、今まで撃たれたことがないため、慣れない痛みにショックを受けているんだろうと予想をつける。

病院に行きたくないというのは――明らかに何か公には知られたくないことがあるせいだ。

でも、彼は警視庁ととても仲が良いはずで――そんなに病院に行けないような事情を背負う必要があるとは思えない。

警察病院にでも行けばいいじゃないか。

少なくとも、傷ついた鳩を抱えた見知らぬOLの家に行くよりはずっと、良い手当てが受けられる。

あるいは、病院が嫌なら知り合いの警察を頼ればいい。拳銃を所持しているんだから、銃に撃たれた際の応急手当くらい知っているはずだ。

――それとも、鳩を助けるくらいだから自分のことも助けると考えた？ まさかな。

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