鳩と雨3 ページ8
うちに帰ると、洗濯機が回してあるどころか浴室に洗濯物が干してあるので心の中で密かに驚いた。
――恋人のものを勝手に洗濯して干すとか、明らかにやりすぎでは?……恥ずかしすぎる……。
動揺するが、来客の手前自分の部屋を見て驚きの声をあげるのは不自然と思いぐっとこらえて彼をソファに座らせる。
「えっと……、君のことは、なんて呼べばいいのかな? 私のことはAでいいよ」
「じゃあ、カイトで」
ソファに座ると、ふうと息を吐きだす。本当に腕が痛むのだろう。脂汗が滲んでいるが、本当にいいんだろうか。
「カイト君、何か飲む? やっぱり病院に行った方がいいんじゃない? 痛み止めならあるにはあるけど……これ、飲んでいいのか分かんないし」
何か飲むも何も、うちにはウイスキーと紅茶と水しかない。
私はミネラルウォーターのペットボトルをカイト君に渡した。
「いや、本当かすり傷なんで……」
と言いながらも青年は眠ってしまった。
困った――意外と私には選択肢がなさすぎる。本当に、他に何も頼れるものがなく、やむなく沖矢さんに電話をかけた。
「――どうしました?」
「いろいろ言いたいことがあるんだけど、どうしても行きがかり上、銃に撃たれてかすり傷があるけど病院に行きたくない人を拾ったら気絶しちゃって……。今更見なかったことにするのも無理ですし、私、どうしたらいいですか?」
はぁ、と、電話の向こうで深いため息をつかれた気がした。
「そうですね。手当たり次第に何もかも拾うのはどうかと思いますが――。
まあ、あなたはどこの誰かも知らない私に家に泊ってというくらいには親切な方ですからね、そんなこともあるでしょう」
うう……言葉にとげがある。だから苦手なんだよ、沖矢さん。本当にシュウと同一人物?
「その人、今あなたの傍で気絶しているって解釈で良いですか?」散々皮肉を言った後に、そう聞いてくれた。
「ええ、まあ――そうです」
「では、30分以内にそこに行きます。そのままうちで待っていていただけますか。ああ、これから私が言うものだけ近くのドラッグストアで買ってきてもらえます? 鍵はかけて出てもらって構いません」
私、帰宅したなんて一言も言ってないのに、怖い……。
「ねえ、違うの。聞いて? 私は人を拾ったんじゃなくてケガした鳩を拾ったら、おまけで人が付いてきただけなの」
「私の知る限り、鳩のおまけに人はついてきませんよ?」
はい、私もそうは思います……。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時