鳩と雨2 ページ7
お、お嬢さん……!?
どう見ても高校生、上に見積もってもせいぜいハタチ前後の男の子にそんな風に声をかけられると、どんな反応を見せていいのかわからない。
私は戸惑いを隠せないまま
「あ……いいえ。大丈夫。傘ももっていますのでお気遣いなく……!」というほかなかった。
「そういうわけにはまいりません。ここで立ち話もなんなので、どうぞ」
「はぁ……」
なんだなんだ、沖矢昴といい、この子といい、謎に丁寧な喋り方、流行ってるの?
いや、安室さんもそうだけどあれは接客業だからっていう前提があるし。
初対面からやたら気さくに話しかけてくれた、平次君の距離感が懐かしい。
とはいえ、あまりにも丁寧な仕草で大きな傘を差し出されたので、無視して歩き出すこともできず私は青年が差し出した傘に入る。
白いシャツに黒パンツのどこにでもいそうな服装でありながら、彼には品があった。
しかし、近くで見ると顔色が悪いし、呼吸が荒い。
「実はあなたの連れている鳩、私の連れなんですよ。お礼を兼ねて本当はカフェにでもご案内したいのですが」
「飲食店に鳩を連れて行くわけにはいかないでしょう?
良かったらうちに来る? それとも次は君をどこかの病院に連れて行こうか?」
「……っ わかります? 参ったな……っ」
青年はため息をつく。
「もしかして、銃にでも撃たれた?」
ぎくっと青年の顔が強張った。「あ、でもオレ怪しいものではないので……。お姉さんにいやお嬢さんにご迷惑をかけるようなことは決して」
「お姉さんでいいわよ」やはりお嬢さんは無理があると気づいたらしい、素直。
さっきの獣医さんも「これ、被弾したように見えるんですけど……まさかねぇ……」と言っていたし……。
「君は右腕を庇っているように見える。それでもこの子が心配だったんでしょう?
でも、私は銃に撃たれた際の応急手当の知識がないんだよね……」
零は忙しいだろうし、沖矢さんを呼び出すわけにもいかない。
一介の大学院生が銃に撃たれた後の応急処置に詳しいのも不自然だし。
「止血と応急処置は自分でしたので、平気です。
ちょっとくらっとするので、少し休めれば」
とはいえ、鳩を連れて入れるところなんてそうはない。
「――いいよ、君はこの子の保護者ってことで。特別に」
やむなく――本当にやむなく。
私は初対面の良く知らない青年をうちに招くことにしてタクシーを呼んだ。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時