鳩と雨1 ページ6
ダイニングテーブルの上にはメモがあった。
『身体は痛くないか?昨夜の君も最高にCuteだった。
一晩中君を眺めていたら夜が明けた。
目が覚めるまで傍に居てあげられなくて本当にごめん。スーツケースは君の家に置いておく。
君が考えているよりも、ずっと深く愛してる。次に君に会える日が今から楽しみだ。XXX』
全文英語。
私はパンをかじりながら何度も何度もシュウの綴ったアルファベットを愛で、彼の語る愛をかみしめる。
目の前に灰皿とライターがあるのは、燃やして帰れということだ。
――こんな小さな紙切れ一枚、私は持ち帰ることができない。私のメモだって残さない方がいいってこと。
わかってる。それでもシュウの生存を知らされているだけ幸せだって思わなきゃいけないのに……。
確かに昨夜熱を分け合ったのに、私の身体には、シュウのキスマーク1つ残されていないことを思い出して胸の奥の柔らかい場所が、乱暴に掴まれたみたいにズキンと痛んだ。
淋しさがこみあげて零れ落ちた涙を静かに拭って、淋しさとパンを美味しくて熱いコーヒーで押し流した。私に、ゆっくり泣いている時間は残されていないから。
.
私は荷物を持って工藤邸を後にした。シュウは別段工藤邸の鍵があろうがなかろうが出入りに支障はないというので、私は鍵をかけそれを郵便ポストに入れておいた。
曇り空の下、家に向かって歩いていると、空から何かがすごい勢いで降ってきた。
――慌てて受け止めれば、それは傷ついた鳩だった。
まだ、温かい――。
私は慌てて鳩を抱きしめ、ここから一番近い動物病院へと向かった。
「これは、野生の鳩ではなさそうですね――」
獣医さんはそういって、鳩の手当てをしてくれた。
「誰かが飼っている鳩ですか?」
「ええ、伝書鳩ですから元気になれば迷わずに自宅に帰りつくでしょう。それまで、あなたが面倒を?」
「はい、もちろんそうするつもりです」
診察料を払うために財布を開ければ、一万円札が50枚くらい入っているので苦笑が漏れそうになり慌てて表情を整えた。
駄目だな――。そろそろ銀行に行くの慣れないと、シュウに会うたびに現金が増えていく。
病院の外に出ると、雨が降り始めていた。
折り畳み傘を出そうとカバンを開けたところ――
「お困りですか、お嬢さん」と、見覚えのない青年に声をかけられた。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時