新宿にて―風見side― ページ49
ようやく降谷さんが職場復帰してくれた。
書類の山はあるにはあるが、自分で判断できるところはやっておいたし、判断できない所は分かりやすくピックアップしてまとめておいたので、これまでよりはずいぶんと書類チェックも楽なはずだ。
あまり大きな情報が入ってこない時で助かった――。
が、まるで降谷さんの登庁を待っていたかのように、新宿で怪しい動きがあるという情報が入ってきた。
「下見だけなので、自分と部下だけで問題ありません」
とりあえず、不在時の情報を頭に入れて欲しかったのでそう言って部下を一人連れて、スーツから私服に着替えて新宿へと足を運ぶ。
――それなのに、ふと、蘇芳Aが目に入ってしまったのだから我ながらどうかしている。
ふわりとした可愛らしいワンピースに身を包んだ彼女は、書店に入ると、迷うこともなく片っ端から分厚い専門書を籠の中に入れていた。
本屋の一角を空にせんばかりの勢いに圧倒される。
――あれ、全部持って帰るつもりなんだろうか。
くるりとレジの方を向いたとき、明るい髪色をした高身長の美青年が彼女に近づいた。二人の雰囲気からして知り合いなのかもしれない。
これは――降谷さんに報告案件なの、か――?
そう思ったとき、ふいにその青年の方と目が合った。
自慢ではないがこれまで尾行や追跡がバレたことなど一度もない。
しかし、彼はあるタイミングで彼女に気づかれぬよう、迷わずにまっすぐ自分に視線をやると、人差し指を自分の唇の前に立て「しぃ」、とジェスチャーを送り微笑んで見せたのだ。
一切邪気のない、人好きのする笑顔だ。それを見た多くの人は彼に好意や好感を抱くだろう。
――しかし、自分だけはゾッとした。
彼は何者なのか。
どこまで何を知っているのか――。
降谷さんに報告するのはそれを掴んでからでも遅くはない。
そう思いなおし、書店を出て、本来の業務に戻ることにした。
123人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時