私は笑顔で嘘をつく3 ページ48
家が近づくにつれてどきんどきんと脈が早まる。
でも、私が切りだすしかないよね――
「ねえ、沖矢さん。やっぱりデートするの良くないと思うの。
私、ここからあなたの正体がバレて本当に殺されたりしたらとてもじゃないけど立ち直れない。
あなたが零に告白できるまでは昔の関係は諦めて?」
ここで私が泣いたら、多分、シュウは私を放っておけなくなる。
だから、私はにっこり笑って見せた。
「私、ほら、シュウの見た目が大好きだから。
沖矢さんとはこれ以上デートしたくないの。
本、買ってくれてありがとう
零に告白できたら、またいっぱい遊んでね。楽しみに待ってる!」
私は昴さんの頬にキスをした、ほんの一瞬。
そうして、重たい本を抱えて慌てて車から逃げるように降りた。
――シュウが当たり前みたいに頭を撫でてくれる前に、キスで私の気持ちを変えてしまう前に、涙がこぼれる前に。
.
そうじゃないと、私はこのままずるずると彼に溺れてしまう。
多分遅かれ早かれ、シュウの仕草をうっかりこぼしてしまう「沖矢昴」のことを好きになる。
それは、組織に、赤井秀一の生存が知られるきっかけにつながるかもしれない。
それに、真実を告げられない以上、零を傷つけることになるかもしれない。
大好きな2人を傷つけるくらいなら、私は笑顔で嘘をつく。
――そのくらいできるくらいには、これまでたくさんの愛情を注いでもらったと思うから。
だって、ずっとじゃない。過ぎてしまえば、多分一瞬だ。
だから、今だけは私が我慢する――そうすればいいだけの話。
私が泣くから、シュウは心配してくれるだけで、きっと。
私が楽しく過ごしていたら、彼だって過剰な心配をせずに自分の業務に邁進できるはず。
シュウは追いかけてこなかった。
1人きりの部屋で、ベッドにもぐりこんだ私は、電気もつけず声を押し殺して泣く。
――いくらシュウでも、ベッドまでは盗聴も盗撮もしていないと、信じて。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時