私は笑顔で嘘をつく1 ページ46
翌日――。零は私と朝食をとると、名残惜しそうにキスを残して仕事に向かった。
さて、私は有給休暇最終日、何して過ごそうかしら――
.
ここは、新宿の大型書店だ。専門書を片っ端から眺めて目新しいものを選択、購入しようとレジに向かった瞬間に
「重たくありませんか?」と、――見覚えのある人が声をかけてきて本を入れておいた籠を手に取ったので、私は目を瞠る。
柔らかそうなピンクブラウンの髪が印象的で、とても中身が偽装死中で身を潜めなければならないようにはみえない、日々ハイネックの服を着こなす、派手な見た目のイケメンが上質な笑みを浮かべて私を見つめていた。
沖矢昴。どういう理由でここにいるのかしら。
「私、スマートフォンは家に置いてきたんですけど」
「なるほど、どうりで何度電話をしても出ていただけないわけですね。あなたに何かあったのではないかと思い、私がどれほど心配したことか」
それはそうなんだけど――私の言いたいことはそこじゃないです。
「GPSが仕込めるのはスマホだけじゃないって前も言いませんでしたっけ?」
穏やかな笑顔で怖いことをいうのは辞めて欲しい。ストーカーの鑑か。
……え、だったら何に仕込んでるの? ピアスや指輪じゃないよね?
「大学には行かなくていいんですか?」
ここ最近は、毎週○曜日に東都大学でお会いしていると思っていたんですが――。
でも、逆に言えば私が大学に行かないのなら沖矢さんもそこで待っている必要なんてないよね。
「それ、今ここで一から説明した方がいいですか?」
「いえ、結構です」
私は首を横に振った。レジに並んでいるのは私たちだけじゃない。
私が全部本を選び終わるまで、きっとどこかで見ていたんだよね――。
全然気が付かなかった。
まあ、本業がスナイパーなんだから、相手に気取られないように見張っておくなんてお手の物なのだろう。
そうだよね。沖矢さんは私が今日まで休みなことがわかっているし、零だってさすがにここまでは休めないとあたりをつけることもできるだろう。
「その本、私が――」
カードで購入するつもりだった結構な量の専門書を、沖矢さんはなんなく全部買ってくれた。
「こんなに重たいのに、全部一人で持って帰るつもりだったんですか?」
「たまにはこういうの片っ端から読みたくなったんです」
専門書に埋もれておけば、業務後に暇を感じて出歩きたくなることもない。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時