休日デート5 ページ43
アールヌーボーのポスター展は、とても素敵だった。
余韻に浸りながらポスターを見れば、来月には宝石展を予定しているという。目玉はビッグジュエル。
私と零は視線を合わせた。なるほど、たまには都心を離れた美術館にも怪盗キッドを呼び出したいのかもしれない。私たちは7月7日、七夕の日から開催されるというその情報を見ながら、美術館を後にして近くのレストランへと向かう。
「――あ、やっぱり安室さん、ですよね?」
不意に声をかけてきたのが、私服姿の高木刑事で私は目を丸くする。
「高木刑事、今日はお休みですか?」零はあえて『非番』という言葉を封印し、にこやかに高木刑事に声をかけた。
「ええ……」
そういえば、以前夜のコンビニで、シュウと一緒に歩いていた時もすれ違ったことがあるんだよね。ドキッとした気持ちが抑えられずに、ぎゅうと強く零の手を握ってしまう。
「気になります? ようやく彼女を目にかけているあのイギリスのホストファミリーの『お兄さん』が帰国したので、僕が猛アプローチをかけているところなんです。邪魔しないでくださいね」
零はなんてことない涼しい顔でそう言うと、しぃ、と、人差し指を立ててウインクして見せる。
どうしてその話(しかも嘘!)を聞かされた高木刑事の方が耳まで赤くしないといけないのか――と思うが、それで納得してくれたみたいだから良かった。
「渉、お待たせ――あら、安室さん!」
後ろから走ってきた、ショートカットの綺麗な女性が、佐藤刑事で私は目を丸くした。
パンツ姿という点ではかわりないものの、いつものスーツ姿とはちょっと違う、ドレッシーな服装だしメイクもいつもよりずっと可愛らしい。
「佐藤刑事、こんにちは。こんなところでお会いするなんて、奇遇ですね」
まさかお二人が付き合っているなんて知らなかった私は目を丸くする。
「蘇芳さん――」佐藤刑事が私に話しかけようとするので、もしかして、先日の平野課長の件を訴えるよう催促されるのではないかと思い、怯えた私はまた零の手をぎゅっと掴んでしまう。
佐藤刑事の言葉を、再び零は「しぃ」と人差し指を立てて曖昧に微笑むことで、あっさり止めた。
「色々複雑な状況下で僕も頑張っているので、どうか、邪魔をしないでくださいね。
もちろん、僕もお二人のことを応援しています。ではお互いに楽しい一日を」
とても穏やかにそう言うと、それ以上の会話はないと言わんばかりに歩き出した。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時