休日デート3 ページ41
観光地にはどうしてこう、美味しそうなソフトクリームが売っているんだろう、不思議。
「どれがいい?」
私は何も言っていないのに、零がそう聞いてきて驚いた。
スイーツなんかより、三食きちんと食べる方が大事っていうタイプなのに――。
でも、手を引いて店の前に連れていかれては我慢なんてできるはずもない。
「薔薇のが、すごく気になる……かな?」零はすぐにそれを注文した。
「零は食べないの?」と問えば、
「赤い食べ物はあまり……」と、ちょっと理解できない理由を返してくる。
――零に苦手な食べ物があるなんて驚きだ。私はまさか零が「赤い」=「赤井」を連想して苦手だと語っている可能性なんて、微塵も思いつくことができなかった。
どちらかといえばピンクに近いし、もちろん、白のバニラソフトクリームだって売っているけど、そもそも、間食を好んでするタイプでもないのかもしれない。
試しに「一口食べる?」と差し出してみても、にっこり笑って首を横に振るだけだ。
ベンチに座ってなんとなく外を眺めながらソフトクリームを食べていると、やたらと鳩に懐かれている女性が目についた。
最初は鳩に餌でもやっているのかと思ったけれど、どうもそんな感じはない。
マーメイドスタイルのオレンジのロングスカートに白いシャツが印象的なその人は、ちょっと離れた場所にいるのに、唐突に目があった。
私はソフトクリームの最後の一口を食べ終えたところだった。そう年齢が変わらなそうな女性は私を見てとても親しげに微笑んだ。
「――あの人、知り合い?」 それに気づいた零が問う。
「ううん、初めて見る人だよ」
「そう? なんとなく先日、どこかで見たような気がするんだが……」
「ポアロのお客さんなんじゃない?」
「僕と顔を合わせたポアロの客なら、一見さんを含めて全員確実に記憶しているが、その中にはいないなぁ……」
零がなんてことない顔で怖いことを言いだすので目を丸くする。何その高すぎる記憶力。
「じゃあ、私の知り合いかしら。そんなに仕事柄人に会うわけじゃないけど――ゼロじゃないし、私はそんなに人のこと全員記憶しているわけでもないから……」
そんなことを話している間に、女性はひらひらとこちらに手を振った後踵を返して、遠くに歩いて行ってしまう。一方、さっきまで彼女に懐いていた鳩はぴたっとそこにとどまっていた。
その様子はまるで「マテ」と命じられた犬さながらだ。でも鳩だし……まさかね
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時