休日デート2 ページ40
思いっきり寝坊して始まった月曜日は、昨日に引き続き、梅雨の中休みといった言葉がぴったりの穏やかな天気だった。
車を走らせたいと零が言うので、都心を離れ、デートスポットとしても知られている隣県の大きな公園へと足を運んだ。平日なので、思ったよりもずっと人が少ない。
そういえば最近緑の多いところをゆっくり歩くような余裕もなかったなと思い、木々を見ながら足をすすめる。頬を撫でる風が気持ち良くて思わず立ち止まって目を細めたら後ろからぎゅうと抱き寄せられてびっくりした。
零の爽やかで甘みを帯びた香りが鼻腔をくすぐる。
「――零?」
「一人で自由に歩き回りたいなら邪魔はしないけど――。僕は君ともっと近くを歩きたい」
優しい声が耳に甘くとろりと響いて、胸がどきんと跳ねる。
「だって――」
安室透は有名人だ。こんな見通しの良いところで日中からデートを楽しんだら誰の目に止まるか……!
口ごもっている私の正面に回ると零は私の頬をそっと両手で挟み、視線を絡めて触れるだけのキスをする。
――いやっ。いくら人が少なくてもゼロじゃないし、それはちょっと……
「だって、何?」
いろんな状況を考えたうえで、それでも私とここでデートしたいっていってくれているってこと?
「なんでもない。あなたがそれでいいなら、私は特に問題ないよ。じゃあ、透って呼べばいい?」
「零がいい」
これ以上向き合っていると、二度目のキスが降ってきそうなので私は慌てて零の手を掴み歩き始める。
「零、意外と自分の状況を不利に不利に追い詰めるの好きだよね。『安室さん』始める前はもっと計算ずくで動いていたような気がしたんだけど」
「『安室透』のモデルにした人の、影響かな」
あまりにも懐かしそうに、それでいて淋しそうに瞳を細めるからそれ以上詳しく聞くことができなかった。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時