米花百貨店にて6 ページ37
参ったなと微笑む沖矢さんは、シュウそのものだ。
そうやって溶け合ってしまうと、私はもう別人だと区別するのが難しくなる。
「もうすぐ時間だな――。ここの方が安全だ。あの爆弾が爆破する可能性は限りなく低い。それよりも、外の銃口の方が危険度は高い。
ここで待っていてもらえませんか?必ず私が迎えに来ます」
そういって、ジャケットの内側に手を入れるのでドキッとする。いくら人目がなくてもここで拳銃を渡されても困るんだけど……
私の顔が引きつったのを見て、沖矢さんは首を横に振る。
「違いますよ、これ。あなたが以前読んでいた本の続編を見つけたので。
読み終わるまでには戻ってきます」
そう言うと、内ポケットから本を一冊取り出した。初めて二人で出かけたときに買ってくれた洋書の続編だった。どうやら既に沖矢さんも読んだみたい。
「これ、ロンドンでの暮らしがすごくリアルで懐かしい気持ちになりません?」
「ロンドンでの暮らしが気に入っていたのか――。てっきり君はこの小説に出てくるような男が好みなのかと」
ロンドンで暮らす小説家が主人公だ。穏やかな暮らしを望んでいるのに、本人の意向とは無関係に事件に巻き込まれてしまうストーリーとなっている。言われてみれば、確かにハードボイルドとは無縁の穏やかな主人公は、赤井秀一よりは沖矢昴のイメージが強い。
紅茶が好きで、小説の傍らよく煮込み料理を作っては編集者に振舞い、締め切りに間に合わないことを誤魔化すのに用いていた。
話を続けたかったが、フロアがざわつき始めたので沖矢さんは席を立ち行ってしまう。
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階下のざわめきを気にしながらも、私は小説を読んで時間を潰した。続編も相変わらず読みごたえがあったが、徐々にファンタジー色が強まっている部分はいただけなかった。
あの、地味ながらも地に足の着いたところが好きだったんだけどな。
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「お待たせしました。もう、心配はいりません」
約束通り沖矢さんが迎えに来てくれた。
「ボウヤのところにお連れしましょうか? 毛利探偵に挨拶もしておきたいですし」
「……コナン君、怒るよ?」家を追い出されるのでは。
「大丈夫ですよ。それにこれから、蘭さんと一緒に買い物するんですよね?」
私はやむなく、沖矢さんと一緒に三人の元に向かうことにした。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時