米花百貨店にて5 ページ36
「仕方ないな、確かに彼は俺が君に向ける表情をなんでも知っている。完コピされたらかなうわけないか。
――君はとりわけ、【俺の】見た目が好きだというし」
沖矢さんは肩をすくめると周りに人がいないことをいいことに、
「そういうわけじゃ……!」
どうも、私が赤井秀一の見た目だけに過剰にこだわっていると勘違いされてしまっている。
「後、どのくらいでこの事件が解決するか予測立てています?」
「20分前後」
「じゃあ、それまではやることないんですよね。一緒にコーヒーでもどうですか? いつも私の頼みを聞いてくれるお礼ってことで。あいにく、紅茶の美味しいお店はこのフロアにはないのでそこのカフェで我慢してください」
私は沖矢さんの手を掴んで、近くのカフェへと行く。店内側の席にいれば、エスカレーターが動き出した瞬間に、彼は動けるはずだ。しかも、マジックミラーになっているので百貨店の方からは店内は見えない。
幸い、事件のインパクトが強いし爆弾がいつ爆破するかわからないという不安感も募り、私たちの挙動を気にしている人はいない。
万が一、監視カメラがこちらを映しているとしても、後で零がハッキングするとは考えづらいし、不都合があれば私が頼まずとも、沖矢さんが勝手に消すはず。
私は勝手にブラックコーヒー2つと、この店の隠れ人気メニューであるパフェを1つ注文した。
不思議そうな顔をするものの、そもそもブラックコーヒーが好きな彼はほぼ無意識にそれを飲む。いつものように、左手でカップをもって。
「このパフェ、びっくりするくらい美味しいんですよ」
私はそう言うと、アイスをすくって彼の目の前に差し出した。
一瞬戸惑った後、それでも私を傷つけたくなくてアイスを食べ、複雑そうな顔をするその表情はいくら顔が違ったって、シュウそのものだ。
「私はあなたの顔の造作よりももっと、私にだけ見せてくれる表情が好きだし、この表情はまだ、零は知らない――だから、次はアイスで見分けますね」
沖矢さんはいつも細めている目をほんの一瞬丸くして、優しい緑色の瞳を私に見せた後、ふわりととても甘い笑みをこぼした。
「それはダメだ」
「――どうして?」
即座に否定されたので、驚いた。良い見分け方だと思ったから実演したのに。
「俺にアイスを差し出す君の特別な表情を他の誰かに見せたくない――どうも君のこととなるとやたら狭量になる」
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時