有給休暇の過ごし方15 ページ29
翌日、私たちは通りすがりのATMで通帳記帳後、宝石店へ向かった。
もちろん、私はさりげなくシュウと行ったのとは別の宝石店に行かなければ――と考えていた。店員さんも面食らうよね。
とはいえ、宝石店などそうたくさん知っているわけでもない。
「そういえば、この前園子ちゃんから聞いたんだけど、先日怪盗キッドが盗みに入った宝石店があるんだって！」
と、零に話を向けてその宝石店に誘うことに成功した。
「零に好きなのを選んで欲しいんだけど」
「希望はないのか？」
「会社にもつけていけるようなさりげない感じがいいなー」
零はゴールドにダイヤがあしらわれたちょっと印象的なデザインの指輪を選んでくれた。
「どの指がいい？」
サイズを確認する段階でそんなことを言いだすから、首を傾げる。
「左の薬指じゃないの？」
「――それはさすがに、図々しいかと思って」
「気にすることないのに！」
今更そこを気にすることに驚いて目を丸くする。
――いや、これまでさんざん何の遠慮もなく人の私生活にふわりと入り込んで歪んだ人間関係まで構築してきた張本人なのに、今更そこ気にする？
「そうだな。でもやっぱりそれはもっと後がいい」
さらりと笑顔でそんなことを言う零に、女性店員さんの眼差しは釘付けだ。
当然、彼が実は見た目の清涼感たっぷりの誠実そうな人とはだいぶ違う歪んだ人だってことを、店員さんに知らせる術はない。
「じゃあ、左の人差し指がいい。パソコン叩くときに一番目に入るから」
「君がそう言うのなら、それで」
「指輪に零と私の名前掘ってもらってもいい？」
「ああ、当然だ」
必要とあらば、しょっちゅう名前を変えるくせに、それはいいのか。
いまいち、降谷零の判断基準がよくわからない。
名前の刻印に一か月かかると言われた。一カ月間何もないように心底祈りながら、店を出ようとしたその時――
「あれ？ この指輪、いつ返ってきました？」と、店員さんが素っ頓狂な声をあげた。
どうやら、怪盗キッドが盗んで行った指輪がいつの間にか返却されたらしい。
騒ぎに乗じて見に行けば確かに、うっとりするほど大きなダイヤモンドで飾られた指輪がそこにあった。
私はそっと周りを見渡してみたが、当然のようにカイト君の姿は見当たらない。
その時、私のすぐ近くを何食わぬ顔をして歩いていくロングヘアの美女が、まさか怪盗キッドの変装だなんて、気が付く術もなかった。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー！スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (
レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です！ありがとうございます0(:3 )〜 ('､3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年10月14日 21時
