溺愛中！6【降谷零/安室透】【沖矢昴/赤井秀一】

鳩と雨9 ページ14

これは私は……FBI捜査官に怪盗の手当てを依頼したってこと？

え？

意味が分からなくて唖然とする。



何はともあれ、怪盗の方は空を飛べるほど元気になったってことだよね。鳩も目を開けてこちらを見ていたし、このまま回復すると思いたい。


.


そんなことを思ってすっかり冷たくなった紅茶を最後まで飲み干した頃、電話がかかってきたので慌てて出た。

「あ、お仕事中かと思って留守電に入れるつもりだったんだけど……。
　毛利です。今日はうちに来れる？」

蘭ちゃんからだった。

「うん、お邪魔する予定だよ。何時に行ったらいい？ 私、今日は早めに仕事あがったの。何時でもいけるから、もし蘭ちゃんの都合が良ければ一緒に夕食作る？」

「わぁ、嬉しいー。
　今、新一の家から帰るところなんで、〇〇スーパーで待ち合わせしませんか？」

一瞬思考が止まりそうになる。


――今、蘭ちゃん、なんていった？


『新一の家』とは、私が今朝までそこに居たあの、現在は沖矢昴が居候している工藤邸ってことで合ってる？

世界が狭すぎて怖い。

でも、電話越しに情報を聞いておいてよかった。コナン君の目の前でものすごく怪訝な顔をしたら、名探偵に疑われるもんね。

――まあ、その疑いは今となっては正しいんだけど。名探偵、鋭いなぁ――。私は彼の前でいつまで、沖矢さんの正体を知らないふりが続けられるんだろう。

そう考えるだけで少し疲れる。

とはいえ、コナン君経由で零の元に沖矢さんの正体が知られるわけにはいかないから、なんとしても秘密は死守しなければ。


――いや、そうじゃないな――。こうなると、そもそも、零とシュウとが同じ彼女を共有する関係になったこと自体間違ってない？ このややこしい人間関係を振り出しに戻す事って可能？ ――いや、それは無理だ。私が孤独に耐えられない。



「う、うん。……もちろん！」私はあふれ出しそうな思考を全てのみこみ、蘭ちゃんと細かい待ち合わせ時間を確認して電話を切ると、慌てて一泊分の荷物を詰めて家を後にした。

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