鳩と雨8 ページ13
もちろん、喋ったのは鳩ではなくて先ほどまでソファで眠り込んでいた青年の方。
私は振り向いて、彼を見た。さっきよりはずっと顔色が良くなっている。
「あ、目が覚めた? まずはこの薬を飲んでほしいんだけど。痛み止め。残りは持って帰っていいから。もしまた痛くなったら飲んでね」
まだミネラルウォーターが残っている。彼は薬を受け取りペットボトルの水でそれを飲み込んだ。
傷を見たのは、FBIはもとより米国国防長官の周囲に居る人たちからも深い信頼を得ているスナイパーだから信頼してくれていいんだけど、彼は今戸籍上亡くなっているのでそう教えることもできない。
「ゆっくりお礼をしたいのですが――」
「いいわ、気にしないで。次に困っている人を見かけたら君が助けてあげて。
今は土砂降りだし、雨が止むまでここで待っていても構わないわよ」
「いいえ、そうは参りません。
このお礼はいずれ必ず」
彼はそう言うと立ち上がって、恭しくお辞儀をした。その時、ふわりと大きく部屋の空気が揺れる。
――え? と思った直後、部屋の中が煙幕に包まれた。
驚いて数回、瞬きをしたその後。
――鳩も青年も、まるで最初から居なかったみたいにその姿を消していた。
.
たった一枚「怪盗キッド」で有名な、可愛い怪盗の絵柄が記された白いカードだけが、ソファの上に残されていた。
慌てて部屋の窓を開ける。
雨の降りしきる中、白いハンググライダーで悠々と飛んでいく怪盗の姿が見えた。
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まつり(プロフ) - おさょさん» ありがとうございますー!スパダリいいですよね。 (2022年10月15日 15時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
おさょ(プロフ) - スパダリ最高です!ありがとうございます0(:3 )〜 ('、3_ヽ)_ (2022年10月15日 15時) (レス) @page3 id: ab6fcf8d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月14日 21時