疑惑27 ページ50
「沖矢さんのことをどう説明するの?」
「取引先の人って以前言ってたじゃないですか。そのままで構いませんよ――難しく考えすぎ」
くしゃりと、沖矢さんの大きな手が私の頭を撫でる。
「そんなに緊張してしまうのなら今日はやめておきますか?
生憎の土砂降りですし」
その時田中さんからメールが届いた。
添付された写真を見て息をのむ……
窓越しにとった上に、雨と傘でわかりづらいけど、シュウといえばシュウに見える写真が一枚。
「これって?」
沖矢さんは手近なところに車を停めて写真を見て息をのむ。
「撮影者に電話してもらえませんか? 今すぐ」
「なんて言うの?」
「私が話すので心配いりません。受付の田中さんでしょ?とにかく急いで」
私がスマホの通話を押した瞬間に、沖矢さんが電話をとる。
『田中さん。写真、びっくりした!これ、どこで撮ったの?』
私の声、私の喋り方で沖矢さんが喋り始めて私は耳を疑った。
沖矢さんは目を丸くする私を見て微笑むとそっと座席を倒す。
そのままジェスチャーで寝ておくように指示された。
『実はこの前警察の人が来てね、最近赤井さんの偽物が出たって。危険らしいの。だから、写真撮ったことばれたりしたら大変だから、心配で。
一人じゃないよね? わかった。もう写真撮らないで? そうそう。ありがとうー。うん、私は家でのんびりしてるよー。だって、これ偽物だもん。本当に気を付けてね。絶対に1人になっちゃだめよ。じゃあ、またね』
電話を切るとすぐ、沖矢さんは車のエンジンをかける。
「頼むから少しだけ、そのままでいて。今夜はやはりうちに帰る」
シュウは自分の声にしてそう囁いた。
「どうして?」
「雨がひどくて降谷君には遭遇できそうにないからな。出直す。それに、ホテルでは俺は【シュウ】にはなれないけどそれでいい?」
シュウの手がそっと私の手に触れた。
いつも温かい彼の手が、今は冷たくてびっくりする。
あの写真から彼が得た情報は、私が考えているもの以上で、きっとここは危険なんだろう。説明できないほどに。
私はぎゅうと彼の手を握る。
「確かに、私今はまだ沖矢さんと同じ部屋には泊まれないかも。それに、シュウとゆっくりお話ししたい」
「いい子だ」シュウは私の頭を撫でるとそれ以上は何も言わず、急いで繁華街を後にした。
+++
続きます
溺愛中!6【降谷零/安室透】【沖矢昴/赤井秀一】
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月6日 10時