疑惑26 ページ49
帰りは、ジェイムズが「出かけるついでに」と声をかけてくれたのでしれっと帰ることができた。
「すみません、なんか、本当に……。あれこれご迷惑を……」
「それはこちらの台詞だよ。君には本当に世話になっているようで……」
お互いにそんなことを言いあった後、申し合わせたように噴き出してしまった。
なんで2人して赤井秀一相手に「保護者」気分になってるんだろう。
ジェイムズにとってはシュウは部下の一人だし、私にとっても――恋人の一人だ。この言い方はおかしいが実際にそうなのだから仕方がない。
「よく考えたら私たちが謝りあうのは何か違いますね」
「それもそうだな」
でも、そのくらい彼のこと、身内を思うような気持ちで見守っているんだよね。
多分、今はまだシュウの生存を知らされていないFBIの人たちだって同じような想いでいるに違いなかった。
.
私はジェイムズにとあるホテルまで連れて行ってもらった。今日は梅雨らしく雨が降っている。入り口に入って待っていると、沖矢さんが車でやってきた。
私はそのまま車に乗り込む。
まあ、そうだよね――。送ってもらったホテルにそのまま泊まるみたいな不用心なことはできないに違いない。
「一つ聞いておきたいんですが、あなたが降谷君を見つけるということは、こちらも見つかるリスクがありますが、そこはどう捉えています?」
「じゃあ、沖矢さんは居なくていい。私一人で探しに行く」
「それはだめだ、危険すぎる」
そうやって突然喋り方をシュウに戻すのはやめてください。混乱するので。
「だって……。私が浮気してることになるのは困る」
「別に男と一緒に居たくらいで必ずしも浮気とは限りませんよ」
沖矢さんの柔らかい声で穏やかに言うからうっかり信じそうになるけど、多分これ流されちゃダメなヤツ。
「だって、もしもあなただったら? あなたは私が全く知らない男の人と二人で繁華街を歩いているの偶然見かけたらどう思う?」
シュウとは呼べないし「沖矢さん」が私をどう思っているのかいまいちわからないので、とりあえず便利な二人称で呼びかける。
「そうですね。よほど手が離せない任務遂行中でなければ、すぐにあなたに声をかけて、様子を見ますし、問題があれば、あなたをその見知らぬ男から引き離します」
――そういえば、つい最近、そうやって助けていただきました。ありがとうございます。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月6日 10時