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疑惑25 ページ48

でも……。まあ、実際のところ、沖矢さんの頼みはシュウの頼みってことだもんね。

シュウが大好きな私に、断れるわけもない。

「わかりました。できる限りやってみます。お急ぎでしたら、情報入手次第連絡しますね」

「さすが、飲み込みが早い。本当に助かります」

沖矢さんはそう言うと柔らかく微笑んだ。そうか、この人、こんな表情もできるのか。単にここに事情を知った人しかいなくて少し気が抜けているだけかもしれないけれど。

でも、素敵な笑顔にドキリとする。新たな発見だ。

「いいえ、お役に立てて光栄です。失礼します」私はジェイムズの部屋を後にする。

ジェイムズはいったいどんな思いでこのやりとりを見ているんだろう――。まあいっか。あなたの部下が変わり者なのは、別に私のせいではない。




昼休み、私はコンビニで買ってきたパンをかじりながら、自分のスマホを開いた。

「ジョディ、ちょっと聞いて?
 私の会社に、シュウの熱烈なファンの子がいるんだけど、一昨日都内でシュウを見たって言うのー!! ねぇ、これ、どういうこと?」

わざと、大声を出して周囲の人みんなにそれを知らせた。

「――!あら、そんなところから情報が入ったの?
 最近、私も聞いたのよね――。どうやらデマと言うには目撃証言が多くて」

「え、いつどこでとかって具体的に知っている人いるんですかー?」

テンションの上がった私を

「でも、日本の警察は優秀よ? あまり期待しすぎちゃダメ」とジョディがたしなめてくれる。

「でも……一応調べたら、偽物ってこともわかったりしますよね?
 シュウの偽物がずーっと出ているのって、嫌じゃないですか?」

と、同情を引くことで、なんとか目撃証言にこぎつけた。

夜の飲み屋が圧倒的に多いんだけど、銀行とか百貨店――みたいな、昼の目撃情報も入ってくる。

無口、無表情、右の頬に火傷、黒い服、黒のキャップ――

無口、無表情とか別に元々だから特に特徴ではない気がするんだけど――。まあいいか。

これで、ニコニコと楽しそうだった――とか言われたら別人って可能性も高まるんだけど。


――どうして、黒のキャップなんだろう。ニット帽じゃなくて?

あったかい時期で手に入らなかったんだろうか。


まあいいや。考えるのは私の仕事じゃない。

私は昨日聞いた、シュウの―沖矢さんの―新しいスマホにメールを送った。

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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月6日 10時

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