疑惑19 ページ42
シュウはソファに座り、私を膝の上に乗せると愛しそうに私をそのグリーンの瞳に映したまま微笑し、私の暴走に身を任せていた。
時折、大好きな大きな手で私の頭を撫で、頬に触れ、魅惑的な低い声で私の名を呼び、会話と言うには意味は薄いが耳に甘い蕩けるような言葉を口にするくらいだ。
「今夜シュウに逢えなかったら、絶対に明日探しに行ってたもん。だって昨日見たって言ったんだから」
「どこでって言ってた?」
私は田中さんに聞いた場所を伝える。
「それってシュウ?」
「いやー―あの日以降、俺はこの姿でこの家から出たことはない。このタイミングで君に出会えて本当に良かった。俺の偽物に君がさらわれるところだったな」
それは困ると、私を胸に抱き寄せ頭を撫でながらシュウが言う。
「じゃあ、シュウに似た人?」
仮にシュウに似た容姿の人がいるとしても、服装まで似せる必要ある?
「さあ、どうかな――。
どうでもいいが、君は俺の見た目が好きなのか?」
「そうだよ、大好き。声も好き」――もちろんそれだけじゃなくて、その仕草も態度も何もかも好きだけど、すべて伝えるには時間が足りない。
「なるほど――沖矢昴には懐かないわけだ」とか独り言ちているけれど、別にそう言うわけではありません。
「了解。その件は俺に任せて。いい子だから一人で探しに行かないで」
「わかった。
じゃあ、それはシュウに任せるね」
私は零を探しに行ってくる。
目撃情報を聞く限り、そんなに場所は遠くない。
「ついでだから、君が気にしてやまない降谷君の居場所も探しておくよ。今持っている情報を聞かせてくれないか?」
目を丸くする私に、シュウは大きくため息をついた。
「君が何を考えているかくらい、すぐにわかる――『それは任せる』と言ったら、それ以外の他のことで動き出すだろうと予測できるだろう、誰だって」
え、そう? 日本語に細かすぎない? 言葉の綾の範疇だよ、それ……
「だってどうせ明後日からしばらく有給だもん」
「じゃあ一緒に探す?」
「私が沖矢さんと一緒に行動するわけにはいかないでしょ?」
「何故?」
「どうしてって……。零に疑われるよ?」――それに怖い。
「降谷君に疑われなければいいのか、了解した」――どうして私の企みは言葉にしなくてもすぐにわかるのに、話したことは曲解するのでしょうか。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月6日 10時