検索窓
今日:27 hit、昨日:57 hit、合計:42,519 hit

疑惑15 ページ38

「非常階段から上がってみましょうか……。人の気配が――、よければ、これ、使います?」

とか、ものすごく気軽な感じで、しかも特に悪意もなさそうに拳銃を渡してくるのやめてもらえますか? 怖い上に、使い方がわかりません。

あと、ぶっつけ本番で使うようなものではないと思うんですけど。もしかして、私のことFBIの関係者だと勘違いしています?

「無理です」――と声を出すこともできないので唇だけ動かして首を横に振る。

「そうですか――。割と使いやすいタイプなのですが」

まるで私が断るなんて思ってもいなかったような口調でそう言うと、では、仕方がないですねと沖矢さんは拳銃をしまい、右手を伸ばして私の手を取った。


――この一連のやりとり、必要?


背筋にぞくりと冷たいものが走る。

私にはやはり、私の半歩先を警戒しながら歩く沖矢さんとシュウが同一人物だとは思えない。

違うのは単に「声と喋り方」「顔と表情」だけではない。

そういう、表面的な単純なことじゃなくてもっと深い何かが根本的に違うのではないかしら――。

彼の中に、喋り方だけでなく思考回路や癖、歩き方や仕草、彼の持つ雰囲気全てががらりと変わってしまうスイッチがあるとしか思えなかった。

それとも、ここまで含めてすべてが彼の「芝居のうち」なんだろうか。



どちらにせよ、万が一私がうっかり誰かに沖矢昴の正体を伝えたところで信じてもらえる気はしないし、私はやはりこれまで通り沖矢さんとシュウとは別人だと思って接し続けたい。

同一人物だと思うと、私の対応がままならない。――全体的に沖矢さんに対しては、「シュウ、やめて。冗談だよね?」「ねえ、本気で言ってる?」って聞きたくなることばかりだ。しかし、沖矢さんにはそう気さくに突っ込めるような隙がない。


階段にいた男をみつけると、沖矢さんは私に踊り場で待っているように指示を出し、ごく簡単に蹴散らした。自分の方が下に居たにもかかわらず、そのハンディが全くないどころか勝っているのがすごい。

私は滑り落ちてきた男を避け、沖矢さんが伸ばしてくれた手をおとなしく掴む。

しぃとまた「秘密」のポーズを見せるのは、これを探偵団の子どもたちには伝えるなと言うことなんだろう。

ええ、もちろん。もはやあなたと過ごす時間のことは、誰にも話す気はないのでご安心ください。

疑惑16→←疑惑14



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (38 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
103人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まつり | 作成日時:2022年10月6日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。