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居候生活6 ページ23

「Aさんの恋の話は?」蘭ちゃんがキラキラした眼差しを私に向けた。

「それはもちろん、山のようにあるわよ。話し始めると、一晩では語りつくせないのでまた時間のある時ゆっくりね」

「ずっるーい!!」

とか言っている蘭ちゃんとわいわい話すうちに夜が更けていく。

静かに布団で目を閉じれば、零とシュウ、2人とも無事で暖かいところに居るんだろうか――。きちんと食事はできたのか――、あれこれと心配が募る。

何度心に問いかけても、私は恋の相手を1人には絞れない。

本当は蘭ちゃんに恋のアドバイスなど、する資格もない。

それに、私がどれほど二人のことを好きだと思っていても、彼らの方が私を置いてさっさとどこかに行ってしまうのかもしれない。私に執着する意味なんてない。彼らの世界は私の世界よりもずっと、広くて深い。

あんな優秀なエージェントが本気で逃げたら、もう絶対に私なんかには探し出せないだろうな……。

そんなことを思いながら、蘭ちゃんが用意してくれた布団で眠りに落ちた。


.


翌朝、なんと私は蘭ちゃんの用意した朝食を食べて家を出る。
出がけに丁度ほろ酔いで帰宅した毛利探偵にこちらから挨拶する前に「こんな美人がうちにいるなんて!」とやたら歓迎されたので、宿泊のお礼を言いそびれてしまった。

今夜お邪魔できるなら、何か手土産と――あとは、一泊食事付きでいくら払えばいいかはっきり決めておこうと思った。

ってことは、現金がいる。
私は銀行に行くべきかコンビニに行くべきか、悩んでしまった。


クラクションの音に振り向くと、沖矢さんだった。

「今日はうちの大学ですよね? 良かったらのっていきませんか?」と言われて、断り文句が思い浮かばない。

「ホテル、泊まれました?」

「ええ。大丈夫でしたよ。今日からは工藤邸に住まわせてもらうことになりました。1人暮らしには広すぎるんですが」と、笑っている。

その後、ついでみたいに

「こんなルートでお見掛けするなんて珍しいですね」と柔らかい声で問われたので、

「ちょっといろいろあって、昨日は毛利探偵事務所に泊ったんです」と、つい素直に答えてしまった。

「……ほぉー、それはまた……何か事件でも?」

「いいえ。娘の蘭ちゃんと仲良く雑談しただけです。ふふ。驚きますよね? 私もびっくりです」私が口を閉じれば、沖矢さんはそれ以上何か聞いてくることもなかった。

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作者名:まつり | 作成日時:2022年10月6日 10時

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