アパート火災と少年探偵団6 ページ12
子どもたちは、同級生の家にお見舞いに行った後に帰宅するという。
「ほぉ、あなたがあの有名な阿笠博士ですか。ぜひお宅にお邪魔したいものです」
沖矢さんは阿笠博士に興味を持ちぐいぐいと迫っていた。哀ちゃんはあからさまに嫌な顔をしているがそこは目に入っていないみたい。
穏やかな言葉づかいで幅広い気遣いができる割に、たまにものすごく強引なところがあるよね、沖矢さんって。もっとも、仕事以外では一切付き合いなどないのでプライベートなことは分からないし興味もない。
「僕たち、お見舞いに行ってから帰るからさ。昴さんはその後で来たら？」
「そうよ、Aさん、以前うちにきたことがあるから場所分かるでしょ？ 良かったら案内してあげてくれない？」
突然、哀ちゃんに指名された。
「うちにきてくれたら、また美味しいお菓子食べさせてあげるね」と甘い言葉で誘ってくれる哀ちゃん。美人であざとくて魅力たっぷりの女の子。私は哀ちゃんが大人になった後のことが今から心配になってしまう。
細かい時間を打ち合わせ、阿笠博士と車に乗り込んだ子供たちを見送った。
沖矢さんと二人、取り残されても少し困る。
「えっと……。住所覚えていないのでスマホの地図アプリで今すぐ探しますね？ ポアロ知ってます？ コナン君が住んでいる毛利探偵事務所でもいいんですけど。あそこから徒歩圏内でしたから、ここからもそう遠くはないですよ？」
私は住所を検索すると、沖矢さんに見せた。
彼の記憶力は悪くないので、このくらい多分簡単に覚えてしまう――はず。
「実は最近引っ越してきたばかりで、あまり米花町の地理を知らないんですよね。よかったら僕の運転する車で案内してもらえませんか？ あの女の子も私と言うよりはあなたに来てもらいたそうでしたし」
「タクシーを使われてはいかがでしょうか。阿笠邸と言えばすぐに案内してもらえますよ。外観もちょっと変わった建物ですし――」
仲がよくもない男性の車に乗るのは気が引けた。
「ああ、そうですよね。すみません」
では――と頭を下げて通り過ぎようとした――。
でも、やっぱりもしかしたら家が燃えたばかりで沖矢さんは不安なのかもしれない。
私は足を止めて振り向いた。沖矢さんは燃えたアパートを見て何やら思案しているようだ。
「何時に向かわれますか？ よろしければ助手席でご案内します」
ロンドンに居たときの自分と重ねてしまい、どうしても放っておけなかった私は彼に声をかける。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年10月6日 10時
