アパート火災と少年探偵団5 ページ11
本を数冊購入した私は、家へと戻ることにした。
どうしても木馬荘の近くを通らないといけないが、さすがにもう誰もいないだろう。
と思って歩いていたら、コナン君の後ろで影になるように身を潜めている哀ちゃんと目が合った。誰を避けているんだろうか。沖矢さん？
「Aさんー！！なんとなんと、私たちが事件解決したんだよっ！！」
歩美ちゃんがぴょんぴょんと跳ねるようにやってきてコトの顛末を語ってくれた。
なんでも、アパート経営者の息子である、歩美ちゃんたちのクラスメイトが書いていた日記がヒントになったとか。
彼は住人にイメージカラーを付けていて、日記内ではその色の名前を使って読んでいたという。赤・白・黄――。犯人は「黄色い人」なんだけど、さてだーれだ？ なんてクイズを出されても、ちょっと困ってしまう。
とはいえ、黙っていられない歩美ちゃんが、
「えっとねー、ヒント！昴さんは赤い人なんだよー！！」とか言っているので、あと2人のうちどちらかだし、そうね、今パトカーに乗せられている人だよね、犯人は。
「沖矢さん、大変でしたね。
今夜だけでもうちに泊まります？」
そう声をかけたのは、本当に彼が途方に暮れているように見えたからで他意はない。
私は家族全員亡くなった後、ロンドンで本当のホストファミリーからあれこれ疑われて居場所がないと感じて途方に暮れていたときに、メアリーから「遠慮なくうちに泊まるといい」と言われて本当に嬉しかったから、ただそれを思い出してまねただけだ。
なんていうか、沖矢さんからは人の体温を感じないのであまり性別を意識したこともなかった。
だから、少年探偵団の子供たちが「きゃー、Aさん、大胆ーっ」「なるほど、こういう時にはそうすればいいんですね」「うな重付きか？」とか騒ぎだして、ようやく自分の非常識に気が付いた。
「あ……。そういう意味じゃないですよ？その間、私は婚約者の家に泊るので、お気遣いなく。うちには大したものも置いてないですし。でもまあ、ホテルにでも泊まった方がいいですよね、すみません、忘れてください」
沖矢さんの表情は特に変化がないので、どう捉えたのか全く分からない。
仕事に差し障りがありませんようにと祈りながら立ち去ろうとしたときに、車のクラクションが鳴った。
哀ちゃんの保護者である、阿笠博士が迎えに来てくれたようだ。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年10月6日 10時
