Secret Talk3―赤井side― ページ9
過去の経験が人より多いとも特別とも全く思っていなかったので、降谷君に引かれたことに驚いた。
まあでも、Aがこれからどこか外でそういう行為をしたいと言い出したら、どう考えても全力で止める。自分が25歳の頃何をしていたのかは棚に上げて。
――勝手なものだな、と思いながら時折、静かに眠ってしまった彼女の様子を確かめる。
あまりにも静かで身じろぎ一つしないので心配だった。
かといって、身体に触れて起こしてしまうのも避けたいところだ。
今日の銀行強盗で人質にされた記憶が、これで上書きされればいいのにと割と本気で強く思う。
「どうしても、彼女は転職しないだろうか」
長い沈黙の後で降谷君が口を開く。
「オンラインでもできる仕事なので辞めても大きな問題にはなるまい。あれだけの実力があれば多分世界どこででもやっていけるだろう。俺も君も多くの場所にコネクションがある。彼女を売り込むのに不足はあるまい。――ただ、俺は、今の環境の方がいいと思う。
一般の人と接触した方が、気が紛れていいんじゃないかな」
――昼間『会社にお菓子持って行っていい?』と無邪気に聞いてきた彼女の笑顔を思い出す。実際今日の帰り際あれこれ袋に詰め込んでいた。彼女にとって楽しく過ごせる場所を簡単に取り上げたくない。
それに、俺と降谷君とで囲ってしまえば、彼女はもうそこから出られなくなるのではないか――。
仮に個人でなくてそれが、FBIや公安だとしても、だ。
彼女にとってはそちらは別世界。
民間会社にいる時のAが一番自然体で生き生きしている。
それを「事件に巻き込まれるのが不安だから」といった漠然とした理由で取り上げてよいとは思えなかった。
それに、俺は組織に命を狙われている身だし、降谷君はそもそもいまだ潜入捜査中だ。安全度が高いところにいるとは言い難い。
そんな二人が彼女を囲って万が一にも俺たち二人が命を落としたら、その後の彼女の面倒は誰が見るのか、どうなるのか――。
そんなに冷静な計算ができる一方で、彼女に対する恋心は自分で制御できないほど強いから実に厄介なのだ。
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まつり(プロフ) - さいさん» ありがとうございます!嬉しいです。 (6月4日 17時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
さい - めちゃくちゃおもしろいです!シリーズの最初から一気に読んじゃいました!この作品大好きです! (6月4日 17時) (レス) id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年9月12日 15時