Happy Days11 ページ40
「いい? 私が引き付けておくからあなたは走って逃げて」
私は田中さんにだけ聞こえるように囁いた。
「大丈夫、私は逃げ切れる。転ばないように気を付けてね」
私はそういうと、自分を精一杯奮い立たせ、にっこり笑って前の男二人の手を掴んだ。
「あら、お兄さんたち、そんなに怖い顔をしては楽しい飲みができないわ」
そういって、2人の間を無理やり開けて田中さんを先に逃がす。
さすが若いだけあって、足をもつれさせることもなく下に走り降りて行った。
「1対3では楽しくないのでは?」
「こっちは別にそれでも」
と、にやにや笑うのは、着崩した安物のスーツを身につけている酔ったサラリーマンだ。
「私は退屈――通して」
腹が立ってきたので、投げつけるようにそう言った。
「君も勝手に通れば?」というが、より強固に前をガードされたので避けて降りれる気がしなかった。
「先に手を掴んできたのはそっちだろう」
挑発的な返しにイライラする。
でも、ここでまた問題に発展したらますます私への送迎と溺愛が激しくなることは必至。別にいいよ。大好きな人たちと一緒に居られる時間が長くなる分には私は嬉しいけど、それでなくても激務に追われている人たちをこれ以上寝不足にするのは気が重かった。
だからなんとか一人で乗り越えるしかなくて――。
私は意を決してもう一度、今度は比較的体の小さめな方の男の手だけを掴んだ。
「通せと言っている」こちらに引き付けておいて、ぱっと放した。相手がバランスを崩したのを機に走り降りようとしたが、もう一人の男に手を掴まれる。
「わぁああっ」と、私が突き落とした男は悲鳴にも似た情けない声をあげた。
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まつり(プロフ) - さいさん» ありがとうございます!嬉しいです。 (6月4日 17時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
さい - めちゃくちゃおもしろいです!シリーズの最初から一気に読んじゃいました!この作品大好きです! (6月4日 17時) (レス) id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年9月12日 15時