Happy Days10 ページ39
つい少し前まで、私がことさら、合コンや飲み会を好んでいたのは、出会いを求めていたこともあったし、なにより、一瞬でも人淋しさが忘れられたからに他ならない。
今はもう、「ちょっとしつこすぎる」くらい溺愛してくれる恋人が――何故だか2人もいるので人淋しさを埋める必要はなくなった。
もちろん、今は恋愛的な意味では新たな出会いも求めてはいない。
だけど、大人数で特になんでもないようなことをワイワイと話すのは楽しくて好き。
初々しい新入社員との会話を聞いているのも楽しくて好きだった。
「蘇芳主任って仕事の幅、広いですよね?」
「一つずつやっているうちに、徐々に広がっていくんじゃないかな。
最初から焦らない方がいいと思う」
せっかく先輩らしく話していたのに
「――蘇芳主任って、相変わらず恋多いですよね?」
ってまぜっかえしてきたのはもちろん、わが社のアイドル的存在、受付を彩っている田中さんだ。
「そんなことないよ?」
「じゃあ、赤井さんとの飲み会セッティングしてください」
すっかり酔いが回っていた。
「だから、早起きしてこの前言ったカフェに、朝、コーヒー飲みに来てって言ってるのに。
だいたい、赤井さんとお酒なんて飲んでも、絶対面白くないよ? ひたすら一人で煙草片手に飲んでいるし、ほぼ何も話さないもん」
少なくとも、FBIでの飲み会に参加していたときはそうだった。
「え? それ理想じゃないですか!私ずっと眺めてます」
さすが写真が欲しいと言い続けているだけあってぶれないな。でもそんな場所セッティングしないけど。
そんな感じでとっても楽しい時間だったのに……。
「ねぇ、僕たちと二次会に行こう?」
お手洗いに立った田中さんを待ちながら帰り支度をしていたら、見知らぬ男三人組が声をかけてきた。
そもそも――シュウは二次会になんて行くなって言ったけど、週の半ばの飲み会で二次会を開こうなんて言う酒豪はそんなにうちにはいない。皆時間が来たらさっさと帰ってしまう――少なくとも、今日の参加者はそうだった。
「行きません。早く帰ろう?」私は、やってきた田中さんの手を掴んで歩き出す。
「ねぇねぇ、そんなこと言わないでさあ、ちょっとだけ、一杯だけ飲んでいこう、ねぇってば」
店内を出ると、下に向かう狭い階段が続いているので、男2人で前を塞がれたら私たちは下に向かえない。
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まつり(プロフ) - さいさん» ありがとうございます!嬉しいです。 (6月4日 17時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
さい - めちゃくちゃおもしろいです!シリーズの最初から一気に読んじゃいました!この作品大好きです! (6月4日 17時) (レス) id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年9月12日 15時