Happy Days6 ページ35
翌日はホテルに戻り、置いていたものを取り戻すところから始めなければいけなかった。
昨日の夜のペースでキスされると、朝からメイクが崩れそうな気しかしなかったので、私は預かりっぱなしだった煙草から一本だけ差し出した。
「ああ――なるほど」ってシュウが言うから、絶対に事の趣旨は伝わったと思ったのが間違いだった。
私にライターを渡して「火をつけて」と言い、わざわざ私に顔を近づけて煙草に火をつけるから、目の前の高い鼻梁や、長いまつ毛に無駄にドキドキする。
しかも、人のアクセサリーを全部自分の手元に置いて、自分でできるって言っている私を無視し、目を、顔を覗き込みながら、わざわざ私の指輪やネックレスや腕時計を一つずつ丁寧につけていくから、ほんっと――無駄に心拍数があがる。
間違っても私に灰を落としたりはしない。
こんなにかっこよく煙草が吸えるとか、ちょっと罪に問われてもいいのでは――。
「はい、これで全部」と言われ、最後に腕時計が私の手首に巻かれた頃にはもはや顔が真っ赤になっていた。
「さっきのなるほど、ってなんだったの？
私は、あまりにも頻繁にキスされたらメイクが崩れるのが嫌で煙草を渡したの、わかる？」
シュウは、「ほぉ」と意味ありげに微笑んだ。
「てっきり、Aは煙草を吸っている俺を眺めたいんだと思ったが、違ったんだな」
そうかそうかと、彼は短くなった煙草を灰皿に押し付けると私の額にキスをして前髪を整える。
――いつまで経っても、赤井秀一には勝てる要素がない。
「せっかくだから、ここで朝食取っていく？」
朝からこんなに色気を漂わせる人とホテルの一室で二人っきりとかもう、絶対に良くない。
今日一日の仕事に差し障ったらどうしてくれるのよ。
私は「As you will(君の気のすむように)」と言うシュウの手を掴んで、部屋から出る。
パンとコーヒーに、卵やサラダがついた程度の簡素な食事をふるまうサービスなので、零ならクレームを入れそうだが、私たちにはちょうど良かった。
今日(火曜日)は、一日中FBIの秘密の仮事務所で仕事だ。秘密の仮事務所と言うが、結構な人数が居る。よくこの状況を「休暇中」の一言で偽れるよね……。
そうして、仕事が終わったらうちの近くまでシュウが送ってくれた。
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まつり(プロフ) - さいさん» ありがとうございます！嬉しいです。 (6月4日 17時) (
レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
さい - めちゃくちゃおもしろいです！シリーズの最初から一気に読んじゃいました！この作品大好きです！ (6月4日 17時) (レス) id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年9月12日 15時
