ある日曜日1 ページ22
零はそのままポアロに行くというので、私はシュウに自宅まで送ってもらうことになった。
1人で家に帰るなんて絶対にダメだと言う。
ついこの間まで割と普通に電車で通勤していたのに……。
たった一回銀行強盗に巻き込まれただけで、過保護度が上がりすぎて怖い。
私とシュウは、我が家で紅茶を飲んでいた。
多分、何かの話の折に「だったらメアリーのミルクティーって、シュウも作れるの?」って聞いたせいだ。
帰り際、コンビニで煙草を買うついでに必要なものを購入していた。
別に、メアリーのレシピを口頭で教えてくれればそれでよかったのに。まだ次の予定まで余裕があるからと、わざわざ我が家によって淹れてくれた。
シュウが淹れてくれたミルクティーは確かにメアリーが淹れてくれたものと似た味がする。牛乳も水質も違うのだから、全く同じとは言えないけれどそれでも懐かしい気持ちになった。
「懐かしい味。美味しい、これ大好き」素直にそう言うと
「それは良かった」シュウが私の頭をくしゃりと撫でて嬉しそうに笑うから、私もそれだけで嬉しくなる。
「昨日はすごく楽しかった、ありがとう」
「本当はどこか遠くに連れて行きたかったが……。時間がなくて。
いろいろ落ち着いたら、今度はもっと長い時間楽しく過ごそう」
「――本当に?」
あまりにも夢みたいに楽しい時間だったから、心のどこかで「もうこれでおしまい」って言われるんじゃないかと不安だった。
「当然だ。ニューヨークにもロンドンにも連れて行く。
もちろん、君がおすすめしてくれた京都にも――今どうしても追っている事件が長引いているうえに佳境なんだ。
これが落ち着くけば――きっと」
「わかった、待ってるね」
ぎゅうと抱き着いたシュウの体温は心地よい温かさで、大好きな匂いで本当にほっとする。
「ああ、君が待っていてくれると思うと俺も頑張れる」
優しく重ねられる唇に、ただうっとりと身を任せた。
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まつり(プロフ) - さいさん» ありがとうございます!嬉しいです。 (6月4日 17時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
さい - めちゃくちゃおもしろいです!シリーズの最初から一気に読んじゃいました!この作品大好きです! (6月4日 17時) (レス) id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年9月12日 15時