ブッフェで朝食3 ページ15
毛利小五郎の一番弟子――という肩書は米花町から離れたこのホテルにおいても、とても有用みたいだった。
零は悲鳴の上がったテーブルに行き、そこに突っ伏している男の脈をとる。そうして首を横に振ると、救急車や警察の手配、そして悲鳴を上げた女性への聞き取りとてきぱきとことを進め始めた。
ここにいる人は一歩も出ないように――ホテルの出入りも一度ストップさせてくださいなどと、現場を仕切り始めている。
突然殺人事件の現場となったホテルの人たちだって、客の中にこんなに頼れるかっこいいお兄さんが現れたら心底ほっとするに違いない。
シュウもこれ以上の事件は起きないと判断したのか、ジャケットを脱ぎ、手をつないだまま私を自分の隣に座らせた。
「これは無差別殺人じゃなくて怨恨だ。そうじゃなきゃ、ブッフェで毒を仕込んで、他の客がぴんぴんしているわけがない。
他に連れが居ない場合は、あの悲鳴を上げた女性が犯人だな。
証拠? そもそも彼女があれほど離れた場所で悲鳴を上げたことだよ。普通、連れがテーブルに突っ伏しているだけで悲鳴なんてあげんだろう?
まず、寝てるんじゃないかと確認しないか? しかしあの距離でそれは不可能。簡単すぎる推理だ。降谷君もあんな茶番に付き合わされるなんて大変だな」
などと、勝手に事件を推理しており、シュウの中では事件はもうすっかり解決したようだった。
だからといって、ここで煙草を吸うのも駄目だし、あったかいコーヒーを取りに行こうとするのも辞めて欲しい――ので、止めた。
こんなに緊張感のあるとところで一人そんなにのんびりしていたら、逆に疑われるのではないかと心配になる。
「ねえ、警察が来たらどうするの?」
ドキドキする。だって警察来たら関係性とか聞かれない?
どうしてこのホテルに泊まっているか――とか。
ん? と、頬杖をつきながらアンニュイに私に視線を向けてくるシュウはびっくりするくらいかっこいい。
「別に、どうも――。そもそも降谷君は立場上本名を語れない。
俺だってFBIと名乗れない以上、それなりの筋書きで合わせればいいだけでは。
ああ、それともAは警察に三人の関係を公表したいってこと? 俺は別に構わんが」とかいってくつくつ笑うから本当に困る。
できれば、もう少しビジュアルと発言内容に一貫性を持たせてほしい。
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まつり(プロフ) - さいさん» ありがとうございます!嬉しいです。 (6月4日 17時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
さい - めちゃくちゃおもしろいです!シリーズの最初から一気に読んじゃいました!この作品大好きです! (6月4日 17時) (レス) id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年9月12日 15時