test of courage15 ページ10
振り向けば、この暑いのに黒スーツを身に纏った男が拳銃片手にへらりと不快な笑顔を見せていた。年のころは40前後だろうか。
――気のせいでなければ、男の持つ小ぶりな銃は「M360 SAKURA」
まさか、ヤクザではなく警察側の人間なの?
とはいえ、彼の様子は、どう考えても私たちを助けに来たようには見えなかった。ごくりと生唾を飲み込む。
昴さんの様子が気になるが、今この殺意を溢れさせている男から目を離すわけにはいかない。
でも、血の匂いがさっきより濃くなっていることがひどく私を焦らせていた。
どうしてこんなに近くで、濃い血の匂いがするの……。
私は倒れた体をゆっくり起こすていを装い、こっそり、スカートの下に手を入れ拳銃を握る。
前方にいた3人がこちらに撃ってくることはたぶんない。
女が拳銃を撃つ可能性はゼロではないが、車の中の話が正しければ彼女は警察だ。
わざわざ私を撃つことはないだろう。
警戒すべきは今入り口に立つ黒スーツだ。私は彼の目線から隠れるように拳銃を握った。
「そうやって、ちっぽけな力でこっちのシナリオを壊されるのは非常に不愉快」
男が何を言っているのかわからない。
男は、私と昴さんを見比べた後、私に銃を向けた。
しかし、男の爬虫類にも似た目は昴さんを見ている。
男の背中越しに昴さんを見れば、右手の指先から赤い血が滴っているのが目について、胸が痛んだ。
これ以上視線があげられないから全貌は見えないけれど、彼は右手より上のどこかを負傷している――。
信じられなくて、胸の奥が一気にざわついた。
そこまで理解した瞬間、自分の右腕の痛みがフラッシュバックしそうになり深呼吸で耐えた。ここで私が正気を失ってしまえば、勝てるものも勝てなくなる。
今の私はあの時とは違う。――きっと大丈夫。
「あのテロが失敗したことも、この女が助かったことも、その映像が出回らなかったことも、不愉快極まりない」
訳の分からない理由で、あからさまな殺意が向けられていることに気づき、全身が粟立つ。
つま先に力を入れ地面を蹴り、私は床の上に立ち上がり、男に向かって真っ直ぐ銃を構えた。
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー! (12月31日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!!安室さん編があるの嬉しすぎます!! (5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます!こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです!!出会えて最高でした〜〜!!素敵な作品ありがとうございます!!!!!!!! (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月17日 9時