test of courage12 ページ7
昴さんが車のドアを開け、どうぞと手を差し伸べてくれた。
こんな状況下でも、とても品の良い甘い笑顔を向けてくれるので、場違いに心臓がドキドキと脈打つ。
私は、彼の伸ばしてくれる手がとても好きだ。
恥ずかしくて掴み返せない時の方がずっと多いけれど。
ぎゅうと握ると、優しい笑顔で私を見つめてくれる。
「今、Jから動画が来ました。
いつの間にかこのビルに、監視カメラをつけていてくれたようで、助かります。
元太君は大丈夫。敵の数は12人ですね。
見える敵は3人。
上階に潜んでいるのが9人。
ただの見張りか、何か目的があるのか気がかりですが……」
端末を見ながら、昴さんは腕を組んで考えを巡らせていた。
ぱん、と、隣のビルから乾いた音が響く。
「――時間指定しなかった割には気が短い奴らだな。
仕方ない。行きましょう」
昴さんは端末をジャケットの内側にしまうと、私の手を掴んだまま歩き出す。
「私、流星組となんかあった?」
どうして、元太君を人質に私が呼び出されたのか、正直わけがわからない。
まさか、お化け屋敷に一緒に行かなかったことを恨まれて――なんてことでもあるまいし。
「世の中には、どうしても、腹が立って誰かを傷つけないと気が済まないっていうタイプの人がいるんですよ。
例えば『私の子供は殺されたのに、彼女はこの危機的状況から助かった、許せない』などと、的外れなことを考える人がいるものです。」
「どの危機的状況?」
「一般論です。Aさんにはどんな危機的状況とも無関係に決まっているじゃないですか。あなたは、私の愛しい恋人ですよ?」
根拠が驚くほど希薄なのに、昴さんがあまりにも力強く言うので思わず笑ってしまった。
昴さんは立ち止まって私を見ると、同じように笑みを見せた。
「やっぱり、あなたには笑顔が良く似合う」
何度も何度も聞いたはずの優しい声が、耳にことさら甘く響いた。
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー! (12月31日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!!安室さん編があるの嬉しすぎます!! (2023年5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます!こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです!!出会えて最高でした〜〜!!素敵な作品ありがとうございます!!!!!!!! (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月17日 9時