ボディガードは不要です8【沖矢昴】【安室透】

test of courage11―沖矢side― ページ6

「少年の安否が気がかりです」

そこまで言うと、車を降りた。Aに聞かせる話でもない。

「正直、彼女に対して何かあるとすればテロリストの家族からの攻撃だと思い込んでいました。

　まさか、警察とは。

　『安室さん』、くれぐれも、彼女のことをよろしくお願いします」





以前、AのPTSDに関する話をしたときの、遠藤医師の言葉が気になって秘密裏に調べた。

父親が殺害されたのち、Aに、頼りにできる家族はいない。

母親の心はとうに現実逃避しており、父親の死因を彼女になすりつけ奴当たることで何とか自我を保っている。

それで、Aは『私のせいで父親が死んだ』と思い込まされているのだ。そんなことないのに。

だから俺は、この夏、彼女の帰省をやんわり邪魔した。

嫌味を聞かされ傷つくためだけに親と会う必要なんてない。

Aと直接この話をしていないのは、まだその時期ではないと思うから。


自覚はないが、俺は他人と比較してどうやら『生』に執着していないようで、FBI(ビューロウ)時代はあちこちからよく怒られたものだが、今は、万が一にも俺が居なくなったら彼女はまたあの母親の元に戻るのか――、と、思うだけで、胸が痛んだ。





「お前、何を言っている？ あと10分もすれば着く、待て！」

降谷くんの言葉が終わる前に電話を切る。


警察官一人なら問題はないが、わざわざ例の廃ビルを指定してきたということは、流星組とのつながりもあるのだろう。そうであれば、なんらかのトラップが仕掛けられていると考えるべきだ。

できるだけ階下で子供と彼女を外に逃がしたい。



Jと上司であるジェイムズにはそれぞれメールで連絡済みだ。二人とも俺以上に頭が切れるから、きっと何か策を練ってくれるだろう。

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