ボディガードは不要です8【沖矢昴】【安室透】

True End5(おまけ43) ページ41

秀一さんは年末までには退院できた。


一足早く退院することになった安室さんも、挨拶に来てくれた。


「ああ――そういえば、僕はもう『安室さん』でいる必要もなくなったんだ――今度会ったときは降谷さんって呼んでくれない？」

突然そう言われても、反応できるかどうか自信がない。

「じゃあもうポアロで会えないんですね？」

それは私にとってはとても淋しいけれど、安室さん――改め降谷さんにとってはきっと喜ばしいことなんだと思う。

「そう言われると、まだまだ働きたくなるな――次に君が失恋したと言い出した時、今度こそチャンスを逃さないためにも」

すっかり包帯の数も少なくなった降谷さんはにっこり笑う。それは、去年のクリスマス、落ち込んでいた私を助けてくれたのと同じ、温かい笑顔だった。

「残念だったな、降谷君――そんな日はこないので安心してくれていい」

それまで黙って二人のやりとりを聞いていた秀一さんはにこりともせずそう言って私の手を掴む。

降谷さんは私に目を移すと肩をすくめた。

「組織解体後のあれこれのために、あなたと一緒に仕事をしないといけないなんて――今から憂鬱です」と、本気とも冗談とも思えない口調で告げて病室を後にした。


もう、沖矢昴でいる必要もないし、工藤邸で身をひそめる必要もない。

公安とFBIは組織解体後の後処理のため、表立って協力体制がとれるようになったこともあり、秀一さんは君が大学を卒業するまで日本で暮らすと言ってくれた。彼が勝手に借りてくれた広めのマンションには特に文句はなかった。

1人で大学に行かせるなんて心配だと言ってしょっちゅう沖矢昴として一緒に大学に来るので、多分彼はまともに仕事なんてしてないと思う。


それでも――私にとってはこれは、とても幸せな日々の始まりだ。
米花町に顔を出せばたまに事件に巻き込まれるけど、命にかかわるほどじゃない。


せっかくだから一緒に花見でもどう？ と開いてくれたお花見には――FBIに公安、捜査一課、工藤新一君や毛利蘭ちゃん、宮野志保ちゃんの姿もあって、とても多くのメンバーで楽しく和やかに過ごすことができた。

秀一さんは相変わらず過保護で、優しくて、私を甘やかすのがとてもうまい。

今年こそ楽しい一年になりますようにと、花見の帰り、2人きりになった桜の下で、私は思い切り背伸びして秀一さんの首に手を回し、とても優しく微笑む彼の唇に強く甘く唇を重ねた。

True End

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