True End2(おまけ40) ページ38
外に降りれば辺り一面白で染まっていた。
吐く息が白い。
どっちに向かおうかと頭を悩ませる。
一度マンションに帰るべきだろうか。
――それとも、工藤邸？
「……今の時間は、講義中ですよね？
あなたは、物理工学の講義を受けているはず」
不意に後ろから、昴さんの声がした。
ドキッと心臓が跳ねて、私はゆっくり振り返る。
入口のドア付近の壁に縋り、白いコートを身に纏った「沖矢昴」がそこいにた。
手には、大きな花束
――私に二度も贈ってくれた、あのゴージャスな花束だ。
そうして、足元には赤い血が滴っている。
「――何してるの？ 大けがしたって、安室さんが！」
スマホを取りだすか彼に駆け寄るか、一瞬迷ったけれどひどく懐かしい顔で花束を持ったまま、おいでと伸ばされた手に縋りつかない選択肢はなかった。
考えるより前に私は、彼の腕に飛び込んでいた。
「あれほど講義の邪魔はしないと言ったのに。結局邪魔をしましたね」
「なんで、大けがしたって……」
「目が覚めたのに、Aさんがいなかったから……。
これ以上寝ていられなかった。
けがはない？ 君が無事なら、それでいい……っ」
ゴージャスで懐かしい花束を私に渡すと、彼はひどく懐かしい顔で私の頬に触れ、頭を触り、身体を抱きしめて、大きく息をついた。
「――Aさん、いっぱいまたせてごめんね。待っていてくれてありがとう。愛してる」
昴さんが今気にすべきなのは、足元に広がっていく血液なのに。
きっと体はすごく痛いはずなのに。
そんなこと全くないみたいな、懐かしいほど優しく甘い笑顔を私に見せて、ただただ優しいキスをして抱きしめてくれるから、私はしばらくの間身動きが取れなくて。
「昴さん、おかえりなさい。ずっと待ってた」って、ただ、彼に縋りついて泣くことしかできなかった。
「赤井秀一――やっぱりここだったか」と、背中で呆れたようにため息をついた安室さんの声が聞こえてくるまでに、どれほどの時間が経ったのか、全く覚えていない。
True End3(おまけ41)→←True End1（「おまけ」総集編＋39）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー！ (12月31日 21時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました！！安室さん編があるの嬉しすぎます！！ (5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます！こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです！！出会えて最高でした〜〜！！素敵な作品ありがとうございます！！！！！！！！ (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつり
| 作成日時：2022年8月17日 9時
