distance3 ページ33
「君を嫌いになる可能性など、微塵も考えたことがない」
秀一さんは、何をおかしなことを言いだすのだと言わんばかりの口調でそう言った。
「――好きでもないのに？」
「悪い。本当に今『人を好き』という気持ちはわからん。
恋愛感情をろくなことに使ってなかった報いだな」
秀一さんはひどく自嘲気味にそう言うと、そっと私の髪を指先ですくいながらいくども撫でた後、髪を耳にかけ私の頬を手の甲で触れた。
瞳をあげれば、ひどく不安そうな眼差しが私を見ていた。
とても、普段の彼には似つかわしくない眼差しに目が離せなくなる。
「でも、君が他の誰かに触れられそうになると、ひどく嫌な気分になるし、君の涙を見ると、俺も哀しくなる。君が体調不良だと心配で他のことが手につかない。
君が俺の目の届かないところで暮らすなんて、到底考えられない」
私は今、何の告白を聞かされているんだろうか。
あまりの恥ずかしさに耳まで赤くなる。
「秀一さん、それが、【好き】じゃダメなの？」
「いや、これは独占欲。これだけでは君の恋人にはしてもらえない」
残念だ、と彼は皮肉っぽい笑みをみせ、自分の額と私の額をそっとくっつけた。
そうして、改めて私を抱きしめると、耳元で囁く。
「だから、君をもう一度好きになるまで、ボディガードとして傍においてくれないか？」
困ったな。どうして、何の記憶もないのに、同じ口説き文句にいきつくの？
その日が来るまでに、私はあとどのくらい彼のことを好きになってしまうんだろう。
「はい。よろしくお願いします」
私が素直にそう言うと、秀一さんは――嬉しそうにとても甘い笑みを見せる。
それがとても嬉しかったから、彼と秀一さんとのの関係が――ボディガードから恋人に戻るまでに、そんなに時間がかからないといいなと祈るように願いながら、私はそっと彼の頬に触れるだけのキスをした。
Fin.
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー！ (12月31日 21時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました！！安室さん編があるの嬉しすぎます！！ (5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます！こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです！！出会えて最高でした〜〜！！素敵な作品ありがとうございます！！！！！！！！ (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年8月17日 9時
