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distance:距離、経過、遠慮
「あ、あの……赤井さん、昼間はありがとうございました」
私は自販機にお金を入れようとする赤井さんの手を止めて、缶コーヒーを差し出した。
「これ、今から持って行ってお話ししようと思ってたんです――もし、ご迷惑でなければ」
赤井さんは形の良い瞳を丸くした後、ごく緩やかに口角を上げ笑みを見せると身をかがめて私の視線にあわせてくれた。
「俺も同じことを考えていた。君は今、何なら飲める?」
「カフェインが入ってなければ大抵何でも……。あ、リンゴジュースとか」
赤井さんはリンゴジュースを買うと私に手渡し、もう一方の空いている手をそっと掴んだ。
どきんと心臓が高鳴る。
「君のペースで歩くつもりだが――早すぎたら遠慮なく言ってくれ」
それは機嫌が悪いというよりは、むしろ照れているようだった。
病室は本当にすぐそこなのに。
「はい」嬉しくてぎゅっと掴み返す。
「ソファがあるからこっちの部屋に来る?」と誘われるがまま、彼の病室に向かう。
3人は座れそうな広めのソファに座る距離感すら、彼はどうすればいいか考えているようだった。
「横になった方がいい?」
「いいえ、大丈夫です。赤井さんこそ、背中とか――痛むんじゃないですか?」
「そんなことはない。――ありがとう」
彼はほんの一瞬躊躇した後、手を伸ばしてそっと私の頭を撫でた。
「君のことを覚えていなくて、本当に申し訳なく思っている」
「いいんです。赤井さんのせいじゃないですし。
それに、私のことよりも、沖矢先輩になることの方を忘れなくて本当に良かったって思ってます」
「君と俺はそんなに他人行儀な間柄だった?」
赤井さんは不思議そうに、やや首をかしげる。
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー! (12月31日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!!安室さん編があるの嬉しすぎます!! (5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます!こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです!!出会えて最高でした〜〜!!素敵な作品ありがとうございます!!!!!!!! (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月17日 9時