lost12 ページ27
しばらくして気持ちが落ち着いた私は、時間があるから歩行練習でもしようかなと立ち上がる。
すっかり筋力が弱ってしまったので、退院したらまた一から身体作りしなきゃな、と思いながら廊下に出た。
ふと足を止めたのは、コーヒーの香りがしたから。自販機のカップコーヒーの香りだけど、もう何日もコーヒーを飲んでない私にとってはとても魅力的だった。
「コーヒー、飲みますか?」
突然背後から声がして驚いた。
相変わらず足音立てずに歩くのね。
「驚かせてすみません。ひどく熱心に見られてたので」
懐かしさすら感じる声に、顔を向ければハイネック姿の沖矢昴がいた。
煙草の匂いがする。
そっか。病院の服では首元が見えるから……
安室さんに会うためには、ここまで着替えないとダメだよね。
「私、まだコーヒー飲めないんです」
彼は私の返答などお構いなしに、自販機を眺めると何の迷いもなく、私の大好きなカフェオレの入ったペットボトルを買った。
なんで、昴さん、私のこと記憶ないのにそこは変わってないんだろう。とりあえずこれが宝石とか鞄じゃなくて、ペットボトルで良かったけれども。
話、聞いて?
「あの……先輩、話聞いてます? 私内蔵にダメージがあってまだ治りきってないから、まだコーヒー飲むのダメって言われてて」
私は、ペットボトルを手にしたまま、それを眺めて動かなくなった昴さんを見上げーー
彼の頬が涙で濡れるのを、初めて目にした。
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー! (12月31日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!!安室さん編があるの嬉しすぎます!! (2023年5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます!こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです!!出会えて最高でした〜〜!!素敵な作品ありがとうございます!!!!!!!! (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月17日 9時