lost10―沖矢side― ページ25
Jに会ったのは喫煙室だ。
タイミングが良いのか悪いのか、喫煙室には他に誰もいなかった。
『お前――何やってんの』
煙草に火をつけ声をかけると、Jは目を丸くした。
『へえ、俺のことは覚えているのに来日理由は微妙に忘れてるんだ。彼女が絡んでいるせい？
俺は、沖矢昴の偽装書類のあれこれを作るために来日したんだけど。
しかも、お前の家に泊ってるの知ってる？』
『工藤邸に？』
俺が同じ住まいに人を泊めたりするだろうか。
Jにからかわれているのかとも思ったが、真剣な彼の顔にそのような様子は見られなかった。
『そう。お前、昨日の朝ごはん何を作って、何食べたか覚えてる？』
質問に答えようと記憶を辿ろうとするが、うまくいかない。
甘いパンケーキの香りがなぜか鼻腔をくすぐった。
『いや……。朝食はいつもコーヒーだけ』
――「――うっそ？ そんなに背が高いのに？ 絶対食べた方がいいですよ？ 倒れますよ。
散らかってますけど、パンで良かったら食べていきます？ それとも和食派？」目を丸くした誰かの言葉が脳裏を過り、俺は頭を抑えて目を閉じた。
『まあ、おまえがそれでいいなら別にいいけど。
記憶は記憶として、彼女がどうしてさっきお前の病室を訪ねたのかくらい、いくらでも推理できるだろう』
『思い出そうとするたびに、整合性がとれなくなると心のどこかがざわつくんだ』
『だろうな――彼女の傍に居る時の、あんな表情のお前は見たことがなかった。
沖矢昴になったからこそ、得た感情なんじゃねーの？ まあ、それを手放すって言うのならそれもありだな』
Jは新しい煙草に火をつけるのを見ていると、煙草に火をつけられないと拗ねたように言う彼女の口調が耳に浮かんでは消えていく。
『ちなみに、彼女とお前は同居している。出て行って欲しいなら早めに話を付けた方がいい。―ーあの子の家は他にないから』
どうして俺が誰かと同居なんてするんだよ――
頭をがしがしとかきむしる。
でも、相手が押しかけてきたから仕方なく、なんてことはまずないはず。
どれほど、信じられなくても【俺がそう望んだから】だとしか思えなかった。
Jの話が嘘でないなら。
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー！ (12月31日 21時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました！！安室さん編があるの嬉しすぎます！！ (5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます！こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです！！出会えて最高でした〜〜！！素敵な作品ありがとうございます！！！！！！！！ (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年8月17日 9時
