lost1 ページ16
lost:失った、途方に暮れた
目を開けたら、薄暗く、まるで見知らぬ場所だった。
慌てて体を起こそうとして、全身に痛みが走り呻き声をあげる。
『A、気が付いた? 良かった。大きな怪我はないがやはり、腹部にはダメージがある。開腹してあえて縫うほどではないが、あまり無理すると内蔵の傷が治らないうちに開いて、また吐血することになるからしばらく安静にしていた方がいい』
ベッドの傍で本を読んでいたのはJだった。完全な素顔ではなく、昨日一緒に街を歩いたときに近い外見だ。仕事のできそうなクールなビジネスマン。
しかし、白いワイシャツにはべったりと、赤黒い血がついていた。
『J、――昴さんは?』
『まだ手術中だと聞いている。終わったら連絡が入るから、それまでは何もできないよ。
医者を呼ぼうか? ここはFBIが世話になっている病院だが、君が通っている担当医であるドクターエンドウからも、いつでも出向く用意があると連絡が入っている』
『昴さん、そんなに重いんだ――』
時計に目をやれば深夜12時を過ぎていた。
正確には覚えてないけれど、あのビルについたのはお昼前後だったのではないだろうか。
何時間手術しているんだろう。
不安になって涙ぐむ私に、Jは困ったような表情を見せた。
『ああ、火傷が少しね。
でもきっと大丈夫。日本の医者は優秀だ。特にここにいる医師たちは信頼できるよ。日本から帰ってきた奴らが、皆一様に褒めていたから間違いない。
ほら、まずは君が元気にならないと。彼は自分のこと以上に君の身を心配するだろうから。
もうしばらくお休み。
夜が明けるまで俺が傍に居るし、他の誰も入ってこないから心配ないよ』
『そんなの、Jには頼めない』
『ああ、わかっている。俺は、彼(シュウ)から頼まれたんだ』
だから、あいつがやりそうなことは俺もやるよ、といってもとても奴の域には到達できそうにないが、と切なく微笑み病院内の医者を呼んでくれた。
まだ熱が下がりきらない、痛み止めも必要だと言われ、新たな点滴が用意された。
動くなんてもってのほか、しばらくは安静に。どうしてものときは車いす、と言われたため、私は仕方なくもう一度ベッドに横になる。
点滴の中に催眠剤が入っていたのか、単に疲れがひどいのか。
気付けば再び、深い眠りに落ちていた。
+++お知らせ+++
今後、英会話は『』、日本語会話は「」とします。
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まつり(プロフ) - わたしさん» そんなに読んでもらってるなんて嬉しすぎます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございますー! (12月31日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
わたし(プロフ) - 本っ当に大好きで読むのも二三回目です。展開わかっていてもキュンキュンするし、まつりさんのかく沖矢昴が本当にかっこよくて理想すぎてだいすきです。なんでも出来てスマートに手を引いてくれる感じが堪らなくすきです、書いてくれてありがとうございます(;_;) (12月29日 4時) (レス) @page41 id: 2b3cd5dcd8 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!!安室さん編があるの嬉しすぎます!! (2023年5月12日 5時) (レス) @page41 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - チミさん» わあ、嬉しいコメントありがとうございます!こちらこそ、そんなに楽しんでいただけて幸せです。ありがとうございました。またの機会がありましたら、よろしくお願いします。 (2022年8月20日 21時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
チミ(プロフ) - この作品本当に本当に大好きで、毎回更新が本当に本当に楽しみで、なんと言ったらいいのか、とにかく大好きなんです!!出会えて最高でした〜〜!!素敵な作品ありがとうございます!!!!!!!! (2022年8月20日 20時) (レス) @page34 id: 5432b7d0cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月17日 9時