ボディガードは不要です8【沖矢昴】【安室透】

test of courage20―安室side― ページ15

僕ですらいまだに、理解しがたい状況だ。
公安の名前に傷をつけたいがために、テロの成功をもくろんでいた。

それが失敗したからと言って、そこに偶然居合わせた一般人を再度巻き込み殺そうとする警察官なんて実在するのか？

まるで悪夢を見ているようだ。

テロリストの裏に警察官がいたなんて――。それも「僕ら公安」を貶めるために。




「風見、早急に関係者全員を洗い出せ」

幸い、黒幕と思われ先ほどAに銃を向けた男はその大半を負傷しているが、なんとか一命はとりとめそうだ。話を聞きだすには十分だろう。

子供を誘拐し女性警察官を脅し、一般人を誘拐させる。
そのうえ、その女性警官に爆弾を巻き付け、爆死させるなど狂気の沙汰。
加えて、一般人まで巻き込むなんて――万が一この話が明るみに出れば、トップ総辞職どころの話ではない。

警察のあり方そのものが揺らいでしまう。




しかし、ここはテロリストと関与していた流星組のビルだ。すべてを上に報告したところで、明るみにされることもなく、内々に処理されてしまうだろう。


二度と彼女をはじめとした全ての人が、このようなばかげた事態に巻き込まれることのないように、今ここで全てを洗い出すことができるのは僕しかいない――。



「わかっています。私ができる限りの対処を行います。
　現場に来ている警視庁の人間は最低限。動画の撮影は認められませんでした。これ以上の情報の拡散はさせません。
　テロリストの家族が乗っている船も突き留めています。日本につく前に速やかに対処させます」


だから、今は寝てくれと風見から懇願された。
実際にもう、歩けるほどの気力も体力も残っていないどころか、立ち上がれそうにもなかった。



――何やっているんだよと情けなく思いながらも、僕はおとなしく救急搬送されるほかなかった――

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