ボディガードは不要です8【沖矢昴】【安室透】

test of courage19―安室side― ページ14

「降谷さん、無理しすぎです。
　本当は安静にしていないとだめなんですよ、わかっています？」

Aを抱えあげる力もなく、やってきたFBIの人間に託さなければならない無力感を嘆いていたら風見がそう言った。

しかし、Aに振り向かせるわけにはいかなかった。

そのくらい、沖矢昴の負傷は著しかったから。

右上腕部からの出血もひどかった。
さらに、爆風に飛ばされた窓ガラスなどの破片が、いくつ彼の背中に刺さっただろう。
仮にあの服の下に防弾チョッキを着ていたとしても、熱風によるやけどは免れないのではないだろうか。

その姿を見ていないのに泣き叫ぶ彼女に、これ以上のダメージを与えるわけにはいかなかった。だから、後ろを振り向かせることはできなかった。




しかし、そもそもなぜFBIなんだ。


確かに先日沖矢は、数年前とある内乱激しい某国での争いに義勇軍として参加したため、銃の腕には覚えがあると言い出した。そこでアメリカともコネクションができ、「今も友人が一人遊びに来ているんです、もちろん彼女にはそんな物騒な過去、秘密にしていてくださいね」などと、雑談交じりに話していたが。



とはいえ、この状況下ではあの二人に対し、日本の警察や公安を信用しろと言うのが無理だろう。


せめて、本人たちが信頼できると感じる医療機関で治療を受けさせてやりたい。さらには、今日ここにいたことも、銃を所持していることも、その引き金を引いたこともすべて隠ぺいする。


その裏工作がなんなく行えるくらいの力を、幸い僕は持っていた。

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