夏祭り1 ページ8
「Aさん、久しぶりね?
元気そうで何よりだわ」
米花商店街主催の夏祭りに出かけた先で、哀ちゃんに出会った。
大学で人質になったときに助けてもらったっきり、一度もあっていない。
可愛く浴衣でおめかししていて、可愛らしい限りだ。
「あら、哀ちゃん、久しぶり。
少年探偵団のみんなと来ているの?」
「ええ、そうなの。皆あっちで金魚すくいを楽しんでいるわよ。
そうそう、例の件、私が伝言する羽目にならなくて本当に良かったわ」
「あ――あの時は本当にありがとう。
ええ、ごめんなさい。
あなたと彼が仲が悪いなんて知らなくて」
いまだにどうして哀ちゃんが昴さんを強く警戒しているのか私にはよくわからない。
でも、隣に住んでいるのにほとんど出会わないのは、哀ちゃんがよほど避けたいからなのだと思う。
一度昴さんに聞いてみたこともあるけれど、『話してもいいが――今はまだ時期が――』って重たい口調で前置きされたので「時期が来るまで話さないで」と、話を聞くのをやめたのだ。
哀ちゃんは大人びた口調で
「その件は、いいのよ、別に。気にしないで。
本当に、あなたが無事でよかったわ。
じゃあまたね」と言う。
絶対に自分では食べないであろう綿菓子をもって私の傍に戻ってきた浴衣姿の昴さんは、まるで何も気にしないかのように哀ちゃんにひらりと手を振るが、哀ちゃんの方は警戒心をあらわにし目をそらして去っていった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時