information8―沖矢side― ページ38
「相手はテロリストの家族だぞ?」
詰問口調の降谷くんの言葉を
「つまり、一般人ということですよね」と、流す。
「切羽詰まった一般人を侮らない方がいい」
降谷くんは腕を組んで俺をにらみつけていたが、やがて何かを諦めたのか、ため息をついて口を開いた。
「例の廃ビルの話は聞いたのか」
「ええ、調べましたよ。流星組の持ち物ですね」
「そのテロ組織は資金調達のため流星組にクスリを売っている。あの廃ビルは取引に使われた形跡がある」
「なるほど」
「裏切り者はこちらで早急に探して処分する。
家族の情報は写真付きで早急に送ろう。アドレスは?」
このために用意しておいたメールアドレスを伝える。
「しばらくここに?」
「ああ、あと3日もすれば動けるようになる予定だ。彼女には世話になったのに悪いことをした」
「それはまた、今度彼女と会った時にでも伝えてみてはいかがでしょうか。私は今日のことは他言しませんので」
「本当に身を守れとは言わないつもりか?」
「敵が判明したら検討の余地はありますが、今はまだ漠然としすぎています」
「それであの子に万が一のことがあったら……」降谷くんの表情が苦悶で歪む。
「そんな事態にはさせません。
それに、教えたからと言って、大人しく守らせてくれるわけでもないでしょう? ご存じかどうかわかりませんが、拳銃の怖さを克服するとか言い出して、射撃を始めたくらいです。囮になるなんて言い出したらどうするんですか」
「信頼に足る部下を護衛につけるのは?」
「今はまだ、あなた1人の胸の内に留めておいていただきたい。裏切り者を見つけたあとで検討しても遅くないでしょう」
「そうだな。僕の落ち度だ。なんとかしよう。くれぐれもあの子のことだけはーー」
頼む、と言いかけ目の前の男が一般人であることを思い出したのか、降谷くんは口を閉じた。
俺は端末を取り戻し、病室を後にした。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時