disclosure1 ページ17
disclosure(ディスクロージャー)：暴露、(秘密の)公開、公表
ホテルになんざ泊まりたくないと言い出したJを、説得することを諦めて工藤邸に招いた翌朝。
Jは時差ぼけなのか、元々早起きの習慣がないのか、朝の5時半にキッチンに居たのは赤井さんだけだった。
きっと昨夜遅くまで、Jと二人で積もる話に花を咲かせていたに違いない。
「おはよう。昨夜は眠れた？」そういう秀一さんは、やや疲れた顔をしている。
素直に頭を撫でられるのに身を任せていたら、キスが降ってきた。
珍しく、煙草とお酒の味がする。
「うん、私はぐっすり眠れたよ。
秀一さんも寝たら？」
「寝てないわけじゃない」テーブルに座ったまま仮眠したという意味だろうか。
「そうかもしれないけど、でも、また今夜もJと一緒に話すならやっぱり寝ていた方が良くない？ Jは秀一さんにとって安心できる人なんでしょ？」
「まさか」と苦笑するし、絶対にYesとは言わないだろうけど、わざわざ家にあげたうえに赤井秀一として話を交わしていたくらいだから、間違ってはいないはず。
「――わかった。私の部屋で寝て？ 私も朝食が終わったらそこで執筆の続きに取り組むわ。それなら心配ないでしょ？それとも、これから私と一緒にランニングする？」
「さすがにそこまでの元気はないな。
わかった、君の部屋で眠ろう。くれぐれも気を付けて行っておいで。何かあったらすぐに連絡して」
相変わらず過保護な彼に、「はーい、気を付けて行ってきます」と私は手を振った。
ランニングコースはだいたい決めているし、この時間帯に一人で走っていて、そこで何か危ない目にあったことはない。
1人で米花町を走るのはそもそもよくないのかもしれないけれど、昴さんと一緒に走るのはペースが違いすぎるから、こればかりは仕方がない。
だから、ふと目をやった路地でキャップを目深にかぶったいつもと雰囲気の違う、カジュアルながらも黒い服を身に纏った安室さんの姿を見かけたのにとても驚いて――。
「大丈夫ですか？」と、つい、声をかけてしまったのだ。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年8月1日 15時
