夏祭り4 ページ11
「コナン君、本当にあの仮面ヤイバー取れない?」
どうやら子供たちは、射的ゲームに興じているようだった。
ピストル型といっても、このくらいだと可愛げがあって微笑ましい。
「頑張ってね」
立ち去ろうとすると、「えー、おねーさん、やってかねーの?」と、元太君から声をかけられた。
「ええ、こういうの、あんまり得意じゃなくて――うわっ」
子どもたちと話しているのに、ふわっと引っ張るのはさすがにどうかと――。
昴さんに文句を言おうかと思った瞬間、前方から乱暴に男が走ってきて私のすぐ脇を通り抜けようとした。
その瞬間、男が派手に転んだのが見て取れた。
「――すみません――」
息を切らして走ってきたのは高木刑事と佐藤刑事だ。
「ひったくりを追いかけていたら、こちらに走ってきてしまって」
「いいえ、何につまずいたんでしょうね」
いつの間にかマスクを着けている昴さんが、ごく穏やかな口調でそういう。
「おにーさん、風邪?」
歩美ちゃんが心配そうに聞いてくれる。
「違うの。この人、飲みながら朝までカラオケ歌ってたらすっかり声が出なくなったってわけ」
唐突にそう言いだしたのは、高木刑事と佐藤刑事の後から息を切らして走ってきた、婦警の宮本由美さんだ。
「――由美、いったい何やってるの?」
ひったくり犯を捕まえている高木刑事を見守りながら、佐藤刑事がため息をつく。
「いやあのー、可愛い女子大生を見つけたんで合コンに誘ってみたら、頼んでもいない方がついてきた――というわけでして」
ほんっと昨夜はごめん、と、由美さんが私に向かって手を合わせる。
由美さんは本当に通りすがりの見知らぬ私に声をかけただけなんだろうけど、私は由美さんが赤井さんの実の弟である羽田秀吉さんの彼女だと知っているので、誘われた手前、むげに断ることもできず――。
まあ、由美さん途中から酔いつぶれていたから、本当に朝までカラオケをやっていたわけでもないんだけど。彼女のおかげで説得力ある言い訳ができたから、結果オーライなのかもしれない。
「っていうか、こいつ違法駐車してない? それを確認しに走ってきたんだけど」
「佐藤刑事、拳銃得意でしょ? あれ取って―!」
と、子どもたちが無邪気に絡んでいるのを見ながら、その場をそっと立ち去る。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時