jealousy11 ページ2
「昴さん、――さっきから何かある?」
私はしばらく経った後で彼を見上げて聞いてみる。
今日は何度か、話の流れとは無関係に不自然に私の手を握りなおしたり、抱きしめてくるタイミングがあって――。そのたびに、彼の雰囲気が微妙に変わるのが伝わってくる。
昴さんは私を見て肩をすくめた。
「実際何も起きてないから、『何もないですよ?』って誤魔化してもいいんですけど。
あなたは、私の雰囲気の変化を敏感に感じ取りすぎるから、無理でしょうね」
昴さんは私の耳に唇を寄せ、会話を続ける。
「明らかに銃の匂いがする人物が何人かいる。公安もそれを警戒して街にいるだが、なかなか確保できないみたいだな――」
銃の話題だからか、赤井さんの口調だった。
「銃の、匂い?」
とても、明るくて楽しい街中に不似合いな単語に不安が募り、私も声を潜めて問い返した。
「ああ、君も知っている通り銃を撃った後の火薬の匂いだ。
まあ、だからって突然こんな場所で銃撃戦は始まらないから心配ない。あの様子だと、接近戦。それに既に相手は倒しているだろうから」
――それは、火薬の匂い以外に『別の』匂いも感じるということだろうか。
例えば、血の匂い、あるいは死の匂い。
それは、私の知らない匂いだ。
それでも警戒はしておいた方がいい、と、昴さんは物騒な話題とはうらはらに極穏やかに微笑んで見せた。
「ええ、もちろんあなたが知る必要なんてない匂いです。だから、気が付かないくらいでちょうどいい。
だって、あれは必ずしも人を殺すためだけの道具ではありませんから」
昴さんの言っている意味が分からない。
だって、銃なんて人殺しの道具でしょ?
――私の父の命を奪った、憎い道具。
私はひどい表情をしていたのかもしれない。
昴さんは人通りの少ない路地に入り、そっと耳元に唇を寄せた。
「少なくとも俺は、ビューロウ(FBI)としては、人を救うため、人を守るための手段だと思って利用している」
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時