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Jのようなイケメンビジネスマンは、確かに1人でいる分には声をかけづらいだろう。でも、私が案内することによって、他の人にも「彼が道に不案内で困っているビジネスマン」であることが強調されるのも利点の一つだ。
だって、機会さえあるなら自分で話してみたくない?
実際何度も、本当の館内の人が案内を買って出てくれた。Jはその機会を逃さず、不慣れなふりであちこちを見ていく。相手が英語に不慣れなことも多く、私は通訳として入るので存在が不審と思われることもなく、Jの隣で手伝うことができた。
不慣れなふり、は、本当に便利で彼はふらりと立入禁止の区域にもごく自然に入っていくが、道に迷っている上に日本語が通じない彼を強く責め立てる人はいなかった。
あるいは、私と離れ他のビジネスマンたちの連れのふりをしてどこかに入っていくこともあった。
いくつかのビルに入り込み、可能な限り隅々まで見ていく。
セキュリティが強固であればあるほど、中に入ってからのセキュリティが甘い傾向にもあるようだった。
Jはちょっとした方法(昼食のためにビルから出てきたビジネスマンとぶつかってカードをくすねるとか)でキーとなるカード一枚手に入れば、するりと中に入り込むことができる。私は状況に応じて、彼の部下や取引先になりすませば良いだけだった。
私は『わがままな上司や取引先に振り回される新人でいてくれればいい』と言われたので、たいして芝居をする必要もない。緊張感を覚える前に適切なタイミングでJが声をかけてくれるので、周りから不自然に思われることもなかったと思う。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時