2—沖矢side― ページ50
「昴さん、おかえりなさい。こんなに早く帰ってくるなんてびっくり!」
戸口に立って様子を眺めていたことに気づいたAが、駆け寄ってきた。
それでも、こんな風に感情の赴くままにとびきりの笑顔で出迎えてくれるのはやはり嬉しくて自然と笑みが浮かぶ。
「早すぎましたか?」
「そういうことじゃ……」
一瞬でころころと表情が変わるのは、感情と表情が直結している証で――およそ普段他の人と話しているときにはあまり見えない様子なのでそれがひどく好ましいと思い、衝動のままに頬にキスを落とす。
それだけでそんなに赤くなる、君は本当に可愛い。
「冗談です。たまには三食普通に取っているって証明しようかと」
Aは、再び笑顔で俺を見た後、くるりと踵を返しキッチンに戻っていく。
「そうだよ、有希子さん聞いて? 昴さん全然ご飯食べないし寝ないの。どう思う?」
「あら、素敵。そういうちょっと人間離れしてるところがハードボイルドしているって感じで、いいと思うけど?」
「もぉー!
昴さんはフィクション上の登場人物じゃないんだから、人間離れしてなくっていいんですっ」
彼女が何の気になしにふわりと言い放った言葉を耳にして、一瞬、息が止まった。
行方不明の父親の跡を追うには、普通の人でいたら何も掴み取れないと思って――。
FBIで活躍するには、普通の人ではいられない。
組織で名を上げるには、人であることを忘れなければ無理。
一度死んだ人間なんだし、普通の人でいる必要もない。
そう思って、無意識のうちにかけていたリミットを、君が外してくれたのか。ジェイムズはそれを一瞬で見抜いたとは、恐れ入る。
「ほらね? 赤井秀一がこんなに柔らかい表情ができるなんて優作が知るはずないでしょ? だから昨日あなたは違和感を覚えたのよ」一瞬こちらを見た有希子さんが肩をすくめてそういった。
「――だから、有希子さん。それは別に言わなくていいじゃないですか。煙草の匂いが違ったんです!以上!」
「ま、きっと他の人にはあんな表情見せないだろうから別にいいけど。FBIの赤井秀一ファンとしてはなんか面白くないのよね」
「昴さんに娯楽性を求めるのはやめてください!」
とても本人が目の前にいるとも思えないような会話を交わす2人を静かに眺めているのも、それはそれで悪くはなかった。
+++作者より+++
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ボディガードは不要です6【沖矢昴】【安室透】
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まつり(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんさん、はじめまして。長々と続いていてすみません。はい、続きも書きますねー。まだ、いつ終わるかもわかりませんが引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。 (2022年7月8日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 引き込まれる文章であっという間にここまで読みました!とても面白いです!大変だとは思いますが、続きを心待ちにしています!お体に気をつけてください! (2022年7月8日 19時) (レス) @page16 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年7月7日 9時